2006.8.28 「8月27日の名古屋大学のキャリアパス・シンポジウムを見学しました」



8月27日(日)に開催された名古屋大学の科学技術関係人材のキャリアパス多様化促進事業の一環として行われたキャリアパスシンポジウムを見にいってきました。

このシンポジウムは、名古屋大学が行う「博士学位取得者に対するノン・リサーチキャリアパス事業」の開始を知らせるキックオフシンポジウムで、参加人数が130人を超える盛況ぶりでした。

シンポジウムの内容については、午前中は、名古屋大学の総長のこの事業にかける抱負が語られ、文科省の役人の方の話があり、東芝の役員の方の基調講演があって、最後に、名古屋大学でおこなっているテニュアトラック制度の取り組みの紹介がありました。総じて午前中はあまり今回の事業の中心となる話は少なかったように思います。

午後からは、東北大学における、科学技術関係人材のキャリアパス多様化促進事業の紹介と、名古屋大学の同事業の紹介、その後に、今回の名古屋大学の取り組みが力を入れようとしている4分野(調査・評価、起業・技術移転、知的財産管理、国際協力)についての各分野で実際に仕事をしている人たちからのその分野を取り巻く状況や、実際の仕事内容になどについての話がありました。

今後、これらの重点分野にどのようにドクターやポスドクを結び付けていくのかはよくわからないのですが、各分野の話に関してはとても興味深いものでしたし、内容に関しても過大に期待を持たせることもなく、また必要以上に悲観をさせることもなく、誠実にまとめられたものが多く、とても好感のもてるものが多かったように思います。特に、博士に限らず、修士の学生や学部の学生が聞きにきても十分ためになるものだったと思いますし、今後の名古屋大学のこの取り組みをおこなっていく上での意欲を示す上でも十分なものだったと思います。個人的には、特に知財分野の話をされた日本ガイシの法務部長さんの話や、国際協力分野の話をされたJICAの方の話が興味深かったです。知的財産分野の話は興味がないわけではなかったのですが、知財に関しての取り組み方の一端を知ることができましたし、JICAの方の話では、年を経るにしたがってどのような方向に活動の力点が移っていったのかということを例とともに話していただきました。

東北大学、名古屋大学のこの事業に関しての紹介も聞いたのですが、東北大学に関しては、高度技経営塾というものを学内で開講して、博士課程の学生やポスドクに対して技術経営に関しての教育をするというものでした。この内容に関してはホームページでも見ており、42人も受講者を集めたということを聞いてなかなかやるなと思っておりました。ただ、今回のお話をうかがうと、実態は、締め切り間際になってもなかなか人が集まらず、教授たちに学生を出してもらえるように協力をもとめに駈けずりまわったということでした。また、会場からの質問で、技術経営の教育を施したとしてどの程度のニーズがあるのでしょうかという質問があったのですが、どうも具体的な展望がないというのが現状のようでした。かならずしも就職実績だけで測るわけにはいかないと思うのですが、この経営塾が学内で、少なくても受講した学生に対してなんらかの精神面での変化や指導教官たちへの変化などの波及効果がなければ、来年度以降、方針を大きく変える必要性もあるのかなと思いました。

また名古屋大学の取り組みに関しては、4分野(調査・評価、起業・技術移転、知的財産管理、国際協力)に関しては、名古屋大学内にある程度の実績があり、その強みを生かしてその分野への就職へ積極的に結びつけていこうということのようです。そして、民間企業の研究職への就職に関しては、人材派遣会社を使おうという考えのようでした。将来的には、全学的で、修士や学士までも含むキャリア支援センターのような形にまでもっていきたいという抱負も語ってみえました。今後、具体的にどのように進めていくのかはともかくとして、最終形態に関しても考えをもっておられることに、好感をもちました。

ただ、民間企業の研究職への就職に関しては、人材派遣会社を利用するという点についてはとても気になってしまいました。今回のシンポジウムの当日に、中小の人材派遣会社が4社来ていて、就職相談のブースを設けていたのを見て不思議に思ったので、あえて彼等を選んだ理由をこの事業の実施責任者の方に伺ってみたのですが、いくつかの派遣会社に声をかけてみたが、応えてくれたのが、その4社しかなかったということでした。就職支援をする人数が数人規模の大学であれば、中小の人材業者と組んで就職斡旋までを委託するのはかまわないと思うのですが、名古屋大学レベルの規模(数百人規模)となると、彼等のキャパシティーを超えてしまい、実質的に機能しないということになりかねない危険があると思いました。今後、全学的なキャリアサポート体制を敷いていく中でも、民間企業への就職に関しては人材業者に委託をしていくという方針とのことでしたが、中小の人材業者を入れるのであれば、彼等をどのように活用するのかということはよく考えていかないといけないと思いました。可能性としては、現在の各大学のキャリアサポート室でよく行われているように、就職斡旋までは行わず、あくまでもキャリア相談のみを委託するという形か、営業代行のような形で、名古屋大学の代理人として名古屋大学の管理の元で求人企業の探索を行ってもらうという形がありうるかと思います。

名古屋大学では、まずとっかかりとして4分野から取り組んでいくという姿勢を示していますが、やはり求人の需要は民間企業の技術者という需要が一番多いのではないかと思いますし、全学的な取り組みに広げていくとなると文系学部の就職(主に民間企業でしょうけれど)についても考えていかないといけないようになるだろうと思うので、将来的には民間企業への就職も視野に入れていかないといけないと思います。人材派遣業者に委託をするとしても、例えば、彼等がおこなう就職相談から学生のニーズをつかんでいく方法、企業の動向をつかんでいく方法、そして、それらをど学内での教育にフィードバックしていく方法・仕組みというものは作り上げていかないといけないようにも感じました。

また、もう一つ気になったのが、今回の名古屋大学の事業は名古屋大学のみを対象としたものではなく、広く全国のポスドク・ドクターの学生を対象としたものであるということです。今後、事業を実施している産学官連携推進本部だけでなく、例えば工学部や農学部、理学部などへの協力をしていってもらう必要もあるでしょうけれども、そのときに協力を得ることが難しくなるのかなということを懸念しております。この事業が名古屋大学から浮いた存在にならず、足のついたものとなるためには、名古屋大学が名古屋大学の博士やポスドクに限らず、広く支援をしていかないといけないという必然性を示せないといけないのではないかと思いました。

いずれにしても、今後の取り組みにはとても期待をしたいと思っております。




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