2006.2.12 「キャリアパスの多様化の前に考えること」



今年の1月10日、11日と文部科学省で来年度からはじまる科学技術関係人材のキャリアパス多様化促進事業の公募についての説明会があったそうです。これは、ポスドクや任期つきの助手などが、大学や公的な研究機関以外に社会の多様な場に働き口を求めていける体制をつくるために、大学や研究機関などに事業を委託してやってもらうというものであるようです。

年間の予算が3億何千万円かに減ったそうですが、二日間合わせて150人もくる(一団体あたり2名まで参加可)という大入りの状態だったとのことです。

この事業は、大学や公的な研究機関だけではなくて、例えば会社であっても、大学などと連携をすることによって参加が可能ということもあり、公募の説明会には、群小の人材サービス関係の会社(人材派遣・人材紹介など)も何社か来ていたそうです。公募の説明会に参加していた私の友人の話によると大学からの参加者はともかく、ビジネスチャンス?だと目をぎらつかせている人材サービス会社の人たちは好きになれそうにないと話しておりました。

今回の、委託事業は、事業目的として@「人材と企業の交流や情報発信の促進」、A「ガイダンスや意識啓発」、B「派遣型研修や能力開発」などをポスドクや任期つき助手に対して組織的支援と環境整備をおこなうことにお金を出しますというもののようです。

キャリアサポート的なものが色濃くでているのですが、多くの大学関係者や研究機関の関係者は、実際のところ、具体的にどのような取り組みをしていくべきなのかということは、これまで考えてきたことがなかったこともある上、準備期間があまりに短い(2月17日締め切り)ということもあり、どうしていいのかわからないというのが現状で、何箇所かは人材サービス会社のような外部の機関にほぼ丸投げをしてしまっているみたいです(もちろん、学内での調整くらいはしているのでしょうけれども)。

こういった人材サービス会社の提供するメニューを一部見たり、全部見たりしたことがあるのですが、就職相談にのったり面接対策や履歴書などの書き方セミナーをしたり、さまざまな研修プログラムやインターンシッププログラムを提供するといったものが主流になっています。

個人的な感想なのですが、就職相談や面接対策や履歴書の書き方などであれば、大手の人材紹介会社などでは無償でそういったプログラムを実施していますし、さまざまな研修プログラムやインターンシッププログラムにしても、最終的に、ポスドクたちにどのような状態になることを目指しているのかを示さない状態でおこなうことに意味があるのだろうかと考えてしまいます。また、友人から指摘されたのですが、どうもポスドクや任期つき助手といった人たちが曲がりなりにも雇用されている人たちだということを忘れていてあたかも学生のように思っているのではないかという感じも、彼等の提案から感じることが多いです。単純にキャリアサポートを提供するということであるならば、別に大学が無理しておこなわなくても、無償でやってくれるところが何箇所もあるので、そういったところで、対応してもらえば済むことなのではないかなと感じております。

ただ今回の件で不快に感じているのは、ポスドクや任期つき助手というのは「欠陥」があるから、それを埋めてあげないといけないという前提でキャリアサポートの提案がなされていることが多かったことが一点。そしてもう一点が、ポスドクや任期つき研究者を雇っている大学なり研究機関の多くが今回の件に関して思考停止に陥ってしまったということです。

ポスドクの就職を考える上で一番大切なことは、ポスドクが大学にとどまるものではなく、流れていくものだという前提にたって、彼等が円滑に流れていけるシステムを学内や研究所内に準備し、かつ、そのシステムがそれぞれの大学なり研究所の掲げている使命に合致するものであるということではないかと思います。

今回のキャリアパスの多様化事業に関して、リストラ社員の再就職支援のようなものだと感想を述べておられる方がいました。そういうことを聞いて少しげんなりしてしまうのですが、人材サービス会社が提案するメニューに乗っかる大学や研究機関がある中で、一部、独自の考えに基づいて今回の応募に提案を出そうとしている大学もあるようです。今回の委託事業がただのポスドクの厄介払いみたいにならず、大学や研究機関のあり方、またポスドクや任期制のあり方についてしっかりと考え込まれた提案がなされるのであれば、意味のあるものなのかなと思います。




もどる