第4章:まとめ



以上、第2章で第3章で、大学教育を新入生のトキオの体験を通して、大学院教育を博士課程の大学院生キョウコの体験を通して概観した。大学教育に関しては、学部・学科という既存の枠組みを撤廃することで、その枠組みに縛られて学生の思考の幅を狭めることのないようにした。これまでのように学部・学科ごとに必要な教育を与えるという定食のような発想から、学生自身で自分に合った教育を選んでいくというカフェテリア的な発想に変えたいと思った。このような仕組みが個々の学生にとって満足のいくものとして機能させるために、「進路カウンセラー」や「エルダー制度」、そして「創造教育」といった仕組みにを用意することで、自分自身が必要とする教育がどのようなものであるのかを考える手助けをすることができるのではないかと考えている。

また、大学院教育に関しては、現在博士課程の学生やポストドクターの就職をどうするのかということが問題となっている。私自身、博士課程の現状について政府資料などを紹介するホームページを運営しているが(「博士の生き方」:http://f14.aaacafe.ne.jp/~doctor/)、資料を見ていて、博士課程、特に人文科学系、社会科学系、理学系の就職の絶望的な状況に目を覆いたくなる。このような厳しい状況の中で、博士課程を修了した学生が押しつぶされること無く、自分の居場所を自らの力で獲得していくために、研究テーマの設定から、研究をまとめるまで、一人の自立した研究者として生きていけるように、博士課程での研究を通して自分を高めていかなければならないと考えている。

この論文でキョウコを通して見た大学院教育のあり方は、指導教官と学生を切り離すことで、学生の自立を促すことを目指している。大学院に関しては、必ずしも、研究を継続したいという強い意志のない人間でも入れるようになっていると思う。これは学生本人にとっても不幸な結果を招く恐れがあるため、入学試験の段階で、研究テーマをしっかりと設定していない人間、つまり博士課程に進むべき動機のない人間ははじくようにしたいと考えている。そして一旦大学院に博士課程の学生として受け入れたあとは、助言を周囲の教官や仲間から得られるとしても、基本的に自力で研究を進めていかないといけないように、自分の研究テーマを一つのプロジェクトとして、独立した形で研究をおこなうことにしている。このような環境下で、自立した一人の研究者としての人格が形成されていくのではないかと考えている。

一人一人の人間がそれぞれに自立をするということが、個々人が満足な人生を歩むのに必要なことであると考えるし、また自立した人間をできるだけたくさん社会に輩出していくことが、現在の閉塞感が漂っている日本に活力を取り戻すことにもつながるのではないかと考えている。

(おわり)




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