2004.7.13 「シンポジウム『研究者のキャリアパス』で発表しました」



2004年7月10日(土)に、東工大で科学技術社会論学会シンポジウム「研究者のキャリアパス」という催しに私も一般公募で応募して、博士の生き方について発表してきました。まずは私の発表の内容について、一応予稿を提出しておりましたので、それを示しておきたいと思います。


博士に就職活動への意欲を芽生えさせるために必要な方策

〜ホームページ『博士の生き方』の運営を通して感じたこと〜

博士課程修了者の就職が、学部卒や修士卒に比べて一見、困難に見えるのは、特に理工系の学生に関しては、博士課程の学生が自身の終了後の進路について真剣に考えることができないことに原因があると考えている。

博士が真剣に進路について考えられない理由としては、博士課程にまつわるさまざまなうわさに大きな原因があると思われる。例えば、「博士課程に行ったものはアカデミックポストを目指すものだ」「博士課程に行くと民間企業への就職は絶望的である」「指導教官のコネがないと就職はできない」といったことなどがあげられる。このようなうわさのために博士課程の学生は自分自身で進路が決められないとあきらめている。

 

私自身も、このようなうわさを真に受けていた一人だったのだが、博士課程在学中に、民間企業への就職を決意して、指導教官の紹介なしに、就職活動をしてみて、このようなうわさは実は過大に伝えられている面も大きいのではないかと感じた。

そこで、このようなうわさに惑わされないように自身の進路について考えていただきたいという想いから、博士課程の就職の現状について、なるべく客観的な情報を提供しようと考えて、「博士の生き方」(http://hakasenoikikata.com/)というホームページを昨年、開設した。このホームページは「数字で見る博士課程修了後」「就職活動の進め方」を主なコンテンツとしている。

「数字で見る博士課程修了後」は、主に文部科学省から出されている「学校基本調査報告書」「学校教員統計調査報告書」「民間企業の研究活動に関する調査報告」などを参考として、博士課程からの就職の現状、博士課程からアカデミックポストへの登用に関しての状況をまとめている。

「就職活動の進め方」は、では、具体的にどのように就職活動を進めたらよいのか、就職活動に関してのさまざまなルートに関して、就職活動における心構え等についてまとめている。

今年の3月に博士の生き方の読者を対象として、アンケートを寄せていただいたのだが、読者の中には、具体的な情報を知ったため、進路について踏ん切りがついたという感想をくださる方もいた。

今回の発表では、「博士の生き方」設立の背景とホームページの紹介、現在、人材紹介会社の協力を得て検討を進めている博士に特化した職業紹介の概要について紹介する。


当日のプログラムについては最後に記しますが、今回のシンポジウムでは主として若手研究者(博士課程学生・ポスドク)のことが取り上げられていました。このようなテーマがこれまで深く考えられてこなかったためか、現状についての概要が語られることが多く、シンポジウムの趣旨が良くわからないと言う批判も最後の討議の場で出されていました。しかし、このような催しをとりあえずやってみたということは今後、なんらかの発展が見られていくのであれば、よいことだったのではないかと感じております。

シンポジウムの後の懇親会にも参加していたのですが、会合を終えて、企業の採用担当者と一部の博士の方々の就職に関する意識について大きなギャップが存在していることを再認識いたしました。

今回のシンポジウムでは最後で会議の全体に関して、討議の時間が与えられたのですが、若手の研究者の方々の積極的に発言をされていました。今回のシンポジウムの参加者が私や一部の人たちを除いてほとんどが大学・研究機関の関係者だったということもあるのでしょうが、発言されていた方々はオーバードクターの方や、大学の研究者、博士課程の学生、ポスドク、ポスドク後無職といった方々でした。彼らの発言をまとめるとだいたい次のようになります。

討議の場でこのような話を聞かされて、彼らには、自分でどうしようもない状況をどうにかしようという意思がないのかなと感じてしまいました。例えば、自分に多額の投資をしているのだから、自分に職を与えない国はバカだというように思うのではなく、どうして多額の投資をしてもらった自分の能力を生かしていけるところは他にないだろうかと積極的に道を探ろうとしないのでしょうか?どうして、誰も就職に関してのノウハウを教えてくれなかったと怒りを募らせる前に、積極的に人に聞くなりしてみなかったのでしょう?どうして、今の研究を続けていけかつ食べていける方法がないのか措置を講じてくれという前に、そのような道がないのか自分なりに探索してみないのでしょうか(例えば派遣社員として働けば、週休3日とか4日といった働き方も可能ですし、研究支援者の派遣も増えてはいるようです)?果たして彼らは、自分の将来について真剣に考えたことがあるのだろうかと思いましたし、同時に人から与えてもらうのを当然と考えているような態度に一種の傲慢さも感じました。

彼らの話を聞いているとどうも、現在の自分の研究テーマをずっと続けていくという前提で話をしているようです。私が彼らに提案したいのは、自分の人生にとって本当に重要なことはなんなのかを考えてほしいということです。安定した職に就くことなのか、幸せな家庭を築くことなのか、富と名誉を手に入れることなのか、冒険が欲しいのか・・・。真剣に考えた結果として、今の研究テーマを続けることが最重要なことであるのであれば、その人生を貫いてくださいとしか私も言いようはないのですけれど、まずは一度ゆっくりと立ち止まって考えてほしいと思います。

討議の場では、企業の方からの発言もありましたし、懇親会の場でも企業の採用も担当しているという方ともお話を伺う機会を得ました。その中で、企業が博士新卒なりポスドクなりを採用するに当たって、気にしているのは、求職者が、自分の研究分野にこだわらず、新しいことにもチャレンジしていける柔軟性をもっているかどうかということのようです。なので、配属などについて特にこだわりがないということを示してもらうと採用する側としても安心できるということを話してみえました。大学の先生方でも、ずっと同じ研究を続けている人というのはほとんどいないと思うのですが、企業にいてもそれは同じでしょうし、もしかしたら、ある時点で営業にまわったり管理的な職につくということもありうると思います。

ただものは考えようで、大学では自由に研究テーマを設定して研究をすることができて、企業ではそれはできないと言われますが、必ずしもそのようなことはないと思うのです。「利益を上げられそうなテーマ」という条件さえ満たすのであればあとは企業の方向性も関係してくるかもしれませんが自由にテーマ設定はできるのではないかと思いますし、むしろ新しい提案を欲している面もあるのではないかと思います。企業への就職も前向きに考えてくださったらと思います。

今回のシンポジウムでは、大学関係者が多かったのですが、これから博士のキャリアパスを考えていく上で企業の存在はとても大きいものであると思うので、これから企業関係者も多く参加して、相互の理解が深まればよいのだけれどと思います。

また、博士の生き方と知り合いの人材紹介会社(BSコーポレーション:http://www.bs-corp.co.jp/)で検討をしている博士の就職支援プログラムですが、現在は準備中ではあるのですが、相談には個別に対応させてもらっております。ご興味のある方はぜひ下記のアドレスにご連絡ください。私は、履歴書の書き方と研究概要の書き方についてのアドバイスをしております。よろしくお願いいたします。

webmaster@hakasenoikikata.com

以下シンポジウムのプログラムです。


科学技術社会論学会主催シンポジウム

「研究者のキャリアパス」

日時:2004年7月10日(土)

会場:東京工業大学大岡山キャンパス

 

<趣旨> 科学・技術を含む学術のほとんどの分野で、研究者のキャリアパス が競争的、流動的な方向へ大きく変動している。研究の活性化を目的とするこ れらの改革が、一方ではポストポスドク問題など、混乱をもたらしている。現 状を把握し、学術の将来設計、社会における研究者の役割、大学院の改革など の観点から問題点を整理し、コンセンサスを得られるような提言を目指す。科 学技術社会論学会会員、非会員を問わず、さまざまな視点からの発言を歓迎し ます。

<プログラム>




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