2003.10.23 「僕たちはクズじゃない」



3週間前の「週刊東洋経済10月11日増大号」に面白い特集が載っていました。「2003年秋季版・本当に強い大学」という特集です。

今回の特集が一味違うところは、大学の強さを示すのに、大学の財政面に注目しているところです。これまでこのようなまとまった形で見たことがなかったので、とても興味深かったですし、大学ってたくさんお金をもっているんだなと感慨にふけったりしておりました。

それで、この特集の中で特に気を引いたのは、国立大学の2002年度決算がまとめて載っていたことです。このようなものが見られるようになったとは本当に世の中が進んだものだと思います。国立大学の決算の中でも、旧帝国大学7校にはなかなかびっくりするくらいのお金が注ぎ込まれているようです。それで、興味がわいたのが、それらの大学生一人当たりに年間いくらくらいの経費がかかっているのだろうということです。東洋経済の特集では在学生数は載せてはいてくれなかったので、代表例として東大、京大、阪大のホームページで在学生を調べてきて学生一人当たりの経費を見積もってみました。また、比較例として国立大としては中堅の山形大学、山口大学における学生一人当たりの経費も見積もってみました。

図1 各大学の収入


図2 各大学の支出


※ここで記した数字は、週刊東洋経済から転載したもので、国立学校特別会計の個別大学別収支を私立大学用消費収支計算書諸様式にて修正して示した値である。

各大学の学生数についても、記しておきます。

図2 各大学の学生数


ようやく、学生一人当たりにかかっている金額を求めることができます。以下に示します。

図2 各大学の学生一人当たりにかかっている金額


学生一人当たりにかかっている費用が大きいからといって、必ずしも質のよい教育を受けているとは限らないとは思いますが、学生が受けられる教育サービスがどの程度であるのかを比較する上での目安にはなるのではないかと思います。東大、京大は、国庫補助金の額が飛びぬけて巨額です。どちらも370万円ほど学生一人に対して一年間に注ぎこんでいることになります。また、学生一人当たりの年間の人件費・教育研究費に関しても、東大、京大、阪大で250万円前後になり、山形大学、山口大学などの中堅大学にも150万円以上の額が注ぎ込まれています。今週の週刊ダイヤモンド(10月25日号)でも、「ザ・大学ランキング」なる特集があり、その中に私学における学生一人当たりの年間の人件費・教育研究費という項目がありました。私学で一番お金を学生一人当たりの額が大きかったのが慶応大学で、だいたい年間190万円でした。

たとえば、東大に学部から大学院博士課程まで9年間通うと考えると、約3400万円の国庫補助金が学生一人に注ぎ込まれることになります(もちろん全部が全部学生に注ぎ込まれるわけではないですが、大学は研究機関である以前に教育機関と考えるべきだと思いますし、大学から生み出される研究成果というのがまだまだあまり社会に還元されているとは思えない現状では、大学が生み出す最大の産物は人材であると考えるべきでしょう(それもちょっと怪しいかもしれませんが)。)。

国立大学の学生であれば、多額の国費が注ぎ込まれておりますし、私立大学の学生ならば、すべて自分でまかなっているのでなければ、多額の授業料を親が負担をしているわけです。自分自身にかけられた金額の分だけ、国や親、社会からの期待を背負っていると考えるべきだと思うし、また、その期待に応えていこうとしないといけないと思います。大学での勉強・研究というのは、自分自身に投資された金額に見合っただけの社会貢献ができるような人物になれるように、最大限の努力と工夫をもって取り組まないといけないものでしょう。

しかし、もっとも多額の資金が注ぎ込まれている博士たちがなかなかスムーズに就職ができなかったり、ポスドク終了後にフリーターをやったり、派遣社員をやったりという話を聞くとき、なんともいえない心苦しさを感じます。

最近、地元で、とある人材紹介会社の主催する転職フェアがあったので、見学に行ってみました。そこの人材紹介会社が持っている求人票を自由に見ることができたのですが、技術系職種には、たとえば電気系の職種だけでも400件近くもあり、その上、ネットの転職サイトではあまりお目にかかれない、研究職の求人がとてもたくさんあり、これはひょっとしたら、新卒博士やポスドクの方々にもチャンスがあるのではないかと思わされました。また、そこのアドバイザーの方に博士の需要について尋ねてみました。博士やポスドクの需要というのはそこそこあるらしいです。大手の会社の場合は、今でも修士を採用して、社内で育てる場合が多く、博士はお呼びでないことが多いらしいですが、求人を出してもなかなか高度な技術を持っている人が集まりにくい中堅・中小企業では、博士のような人たちを求めているところもあるようです。もちろん、大学時代にやっていた研究が直接役に立つことはないのですが、潜在力に期待するところが大きいようです。

博士課程の人で、指導教官などのつてを使わずに民間企業の就職活動をしている人というのは割合としては少ないような気がします(博士の絶対数が少ないのもあると思いますが、私自身の就職活動中はほとんど見ませんでしたね)。博士の人の就職はたいがいなんらかのつてなのではないでしょうか?でも、大学とのパイプのないような会社でも、何か研究開発に力を入れたくて、研究をする素質をもった人が必要かもしれませんし、少し経営の安定してきたベンチャー企業が業容拡大のためにさらなる研究員をほしがるということもあるかもしれません。博士やポスドクの方々の就職難というのは、たまたま自分たちの能力をほしがっている人たちを知り合うことがないために生じている面もあるのではないかと思います。また、自分たちの魅力をうまく伝えることができないだけなのかもしれないとも感じます。行き場がなくて、フリーターや派遣社員になる前に、一度、人材紹介会社を利用してみるのもいいかなと思いました。

博士やポスドクの方には、ご自分の積み上げてきた能力を生かせる場所を見つけられるようにあきらめずにあらゆる手段を講じてほしいと思います。



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