2003.9.28 「大手司法試験予備校、大学経営に進出」



9月27日の日経の関西経済面のニュースなので、日経のネット版で検索をかけても載ってないと思うのですが、大阪市が政府の構造改革特区の申請に、「ビジネス人材育成特区」(仮名)を申請することになったというニュースがでていました。この特区の主な特徴は、株式会社が学校運営に参入できるということらしいです。そして、申請が通った場合に、大手の情報技術の専門学校が専門職大学院を設立し(規模30人ほど)、大手の司法試験予備校が司法試験、公認会計士などの資格試験取得を目的とした大学を設立する(規模200人ほど)予定であるという内容でした。もっとも、大阪市が特区の認定を受けた場合でも、文部科学省の大学設置審議会の審査は受けないといけないそうで、審議会にて、カリキュラム内容、教員の陣容などについての認定を受けないといけないとのことで、それほど簡単にはことは進まないようではあります。

私立大学で、自校の在校生や出身者へのサービスの一環として、資格取得のための講座を大学内やサテライトキャンパスに設けるなどといったことが多くなってきているようですが、こういった講座への講師の派遣や、もしくは講座全体の受託を、今回話題になっているような資格試験予備校(T○CとかL○Cとか)のようなところが請け負っている例が多いように思います。いまでもそうでしょうが、司法試験や公認会計士などの難関資格の取得を目指す学生は、大学の講義に出たり、自分で勉強したりするだけでは到底受からないそうで、大学と予備校のかけもちをして忙しく大学生活を過ごすそうです。私の身近にもそんな方がいましたが、そばで見ていてもつらそうでしたね。そういった方々には、大学で資格取得のための講座を大手の予備校に開いてもらえるのはありがたいことかもしれません。そしてそのことは、大学の先生方がある意味、お高く止まっている間に、大学の提供するものと学生のニーズとの間に大きな乖離が生じてきている例の一つととれるかもしれません。

このような資格試験予備校のひとつでごく短い期間ですが働いていたことがあります。かなりのカルチャーショックを受けた覚えがありますが、とても新鮮な体験ではありました。このような会社の基本姿勢は次の一言に集約されると思われます「わが社の最大の商品は講義です」もしくは、「講師はわが社の営業を担っています」。講師は、受講生が目標とする資格(宅建講座とか公務員試験講座とかいろいろあるわけですが)を取れるように授業をするようにするのはもちろんだけれど、仮に受講生がその試験に落ちたとしても、また、同じ予備校で講座を受講してくれるくらいに満足を与えないといけないということらしいです。

大学の講義では、基本的に、何を目的にしてカリキュラムを組んでいるのか不明なものが多かったり(特に大学初年度の教育)、目的はわかるけれど、消化不良に陥ってしまうカリキュラムを組んでいたり(理工系なんかはそんな感じかも)というのが多いかと思います。いったい何のために教育するのかという学生を集めて教育をする目的がなんであるのかという部分が完全に抜け落ちている大学というのは多いのではないのでしょうか?本当に、雇用の調整弁にしかなってない大学って多い気がします。それに対して資格試験予備校は、受講生をある資格に合格させるということで、目標が極めて明確ですし、そのために受講生の意気込みも高いです。また、講師も常に最新の情報を伝えられるように勉強を欠かしません。少なくても、同じ講義ノートで何十年も同じ講義をするということはなさそうです。

とはいいつつも、資格取得のみがかならずしも教育の目的というわけではないと思います。しかし、「全人教育」といった漠然としたものだと、これまでの教育とかわらないので、もう少し具体的にどんなことができる人間を作るという目標が必要とは思います(たとえば「初歩的なアナログ回路・デジタル回路がちゃんと組める人間を作る」とか「社会人としてのマナーがきちんと身についている人間を作る」とか「小学生程度の読み書きそろばんがきちんとできる人間を作る」といった具体的なもの)。こういったことを各大学がそれぞれ工夫をこらせるようになったらいいと思います。

最近、文部科学省の「特色ある大学教育支援プログラム」なるものを試み、これに80件が採択されたそうで(日経、9月19日)、新聞では、一覧表を示して採択された各大学のプログラム名を記しているのですが、こういった数々のプログラムがただの客寄せパンダにならないようにしてほしいものだと思います。

なんにしても、予備校や専門学校が大学経営に参入して、それに対していままで現状に安住していた大学が触発されてくれることを期待しています。



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