2003.9.14 「大学の台所」



以前、新聞(日経の関西版7月25日付)で、関西の有力私立8大学の2002年度の決算が出たという記事がでており、大学の台所事情にも少し興味をいだきました。記事自体は、各大学の個別の事情をざっと説明したあと、トータルで負債が減少していること、そのために株主資本比率に相当する正味財産比率が80%(ほとんど借金をしていないということです)と健全な経営をおこなっていることを述べています。そして、これからの18歳人口の減少に伴い、収入に占める学生からの納付金の割合が高いこと(76.9%)が、今後の懸念材料であると結んでいます。少し前から、国立大学の法人化の話をちらほらと聞くようになっていましたが、では、国立大学の台所事情は、私学と比べたらどんな感じなんだろうなと少し考えておりました。

それで、あまり深くねったわけでは、ないのですが、国立大学と私立大学の財政について、サンプルを示して、比較をしてみようかと考えました。最近はずいぶんと便利になり、たいがいの私立大学は自校の予算や決算をホームページ上で公開しています。また、一部の国立大学でも、いくらの予算が国から降りてきているのかとか、授業料収入がいくらあるのかといった情報を公開しています。また、国立大学全体でいくらの予算が組まれているのかといったことは、学校基本調査報告書に記されております。

では、早速比較をしてみましょう。サンプルとして引いてきたのは、関西では、関関同立として有名な関西大学、関西学院大学、同志社大学、立命館大学です。いずれの予算(一部は決算を示すことになってしまいましたが)も学園全体を対象としたものになっています。

図1 関関同立の帰属収入


図2 関関同立の消費支出


これらの図で関西大学は平成13年度の決算になっており、あとは平成15年度の予算を示しています。帰属収入を見ると、学生生徒納付金すなわち授業料収入が主な収入となっています。関西大、関西学院大、同志社大、立命館大のそれぞれの授業料収入の帰属収入に占める割合は、74.4%、78.4%、82.9%、81.2%となっている。あとは、手数料すなわち入学試験などの収入、国や自治体などからの補助金が大きな割合を占めています。

消費支出についてはどのようになっているのでしょう?人件費(教官、職員などの給料、退職金・年金の積み立てなど)、教育研究費(教育・研究にかかる光熱費とか、物品の購入など)が大きな割合を占めています。それぞれの消費支出に占める割合は、人件費は関西大、関西学院大、同志社大、立命館大のそれぞれで、57.6%、57.8%、58.5%、51.4%となっており、教育研究費は、それぞれの大学で、36.2%、35.5%、35%、40.5%となっています。また、帰属収入は、消費支出を上回っており、学校法人会計基準で定められている基本金も積み立てもこれらの大学はおこなっています。

では、国立大学はどのような状況なのでしょうか?平成14年度の学校基本調査報告書に示されているデータを示そうと思います。

図3 平成13年度の国立大学経費


図4 平成13年度の国立大学収入


ここに示したのは、全国に100程度ある国立大学の総経費、総収入になります。平成13年度に経費として計上されているのは、消費的支出、すなわち図2で示した私学の消費支出と同じ意味の支出が1兆1500億円、そして、建物の新設や土地の取得のための経費である資本的支出を足し合わせた総経費が1兆4600億円程度となります。人件費が62.1%、教育研究費が17%、所定支払金(退職金や年金の積み立て)が8.3%となっています。人件費と所定支払金の合計がだいたい上に示した私学の人件費に相当します。人件費の割合が上記の私学と比べると高くなっています。また、国立大学の場合は、収入が極めて少なく、ほとんどが国からの支援でなりたっていることがわかります。国立大学の収入では、経費の37%しかまかなえません。また、授業料と検定料では、経費の3割程度しかまかなえません。

このような現状では、国立大学が文部科学省の天下り先にされてしまうという懸念も当然かなと思います。上記の私学に比べて、多いと思われるのは、「用途指定寄付金・産業連携等研究収入」、つまり寄付金や共同研究などによる収入です。この数年で急激に金額が大きくなってきています。平成8年あたりから増え初めているのですが、平成7年度で570億円であったものが、平成13年度には900億円程度まで増えています。これは、全収入の増加よりも大きな割合で伸びています。最近、国立大学がTLOの活動に熱心になっていますが、この収入を増やしていきたいと考えているのでしょう。確かに馬鹿にできない程度の金額になっています。

でも、一番収入を増やす手っ取り早い方法は、大学の授業料をあげることだと思います。たとえば今の金額の倍にすれば、経費の6割を授業料でまかなうことができるようになります。たとえば、東大や京大なんかのブランド力のある大学だと、年間の授業料を100万円や200万円にしてもきっと人が入ってくるでしょう(将来どうなるかはわかりませんが)。しかし、過疎の進んでいるような地方の国立大学だと、授業料を上げると本当に人が入学してこなくなってしまうかもしれません。では、どうするかというと、地元の実業界や自治体に奨学金という形で学生に補助をしてもらい、授業料を据え置きにするかもしくは無料にするかしてしまうのです。もちろん、授業料を地元が肩代わりするわけですから、その大学で学んだ学生たちには、たとえば5年以上は大学のある地方で働くことなどを義務付けるわけです。もともと地方に国立大学をおいたのは、地方の産業振興という面もあったと聞きますから、地元に人材を供給するという形で、まずは地方に奉仕をしてみたらどうでしょう?

大学の決算や国立大学会計を見ながらそんなことを考えてみました。



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