2003.7.14  「就職活動のすすめ」



7月8日付けの毎日新聞夕刊(関西版)の「理系白書」の読者の提言に私が出した提言が掲載されました。記者さんには、私の書いた主旨をコンパクトにまとめていただけたと考えておりますが、せっかくなので、投稿した原文を載せておきます。

「大学院博士課程の就職難について〜学生と教官の意識改革が必要〜」

博士課程の修了者の就職難が問題になっておりますが、それは、教官や学生の意識の面での問題が一番大きいのではないかと思います。以下、私が認識している現状を書き記します。

まだまだ、教官・学生ともに博士課程に進んだら、大学や国立研究所の研究者になるのが当然であるという意識が強いと思います。私自身は、自由公募で企業の内定をとってきたのですが、私が大学や国立研究所に残らないことを残念がっていたようでした。また、私の身の回りでも、企業への就職に興味があるが、なかなか指導教官にそのようなことを打ち明けられないということを述べているものもいました。「ドクターは大学に残るものである」という「常識」が崩れないとなかなか博士課程の学生も企業への就職を真剣に考えるようにならないのかなと感じています。

学生の意識に関しての問題ですが、博士課程の学生の中には、政府や世間の人が期待するほどには新しいことに意欲的に取り組めるような気性をもっていない人が多いような気がします。どちらかというと、現在の博士課程は、学部や修士で大学を出て、産業界でやっていく自信のない人が行くところとなっているような気がします。私たちは、自分の学年を示すのに、D3、D2、D1と呼びますが、このDはドクターのDではなく、自虐的に「ダメ人間」のDなどと言ったりもします。研究室の後輩達からは、ドクターに行ったら、人生先が真っ暗だとまで思われています。よく「博士は専門性が高いから使いにくい」などと言われますが、その意味するところは「専門性が狭く、興味の幅が狭い」ということだと思います。同じことをずっとやっていると、どうも自分のやってきたことを離れて新しいことをやる自信がなくなっていくことが多いようです。私自身もそういうところはありましたし。そういう理由で、ポスドクに申し込む場合も、自分の専門によく合致したものにしか応募しなかったり、企業を受けるにしても自分の専門性に固執したりして、墓穴を掘るということも多いのかもしれません。

また、これも学生の意識に関しての問題になるのでしょうが、これだけ博士課程の就職難が叫ばれ、学生本人も、自分たちがどうなるのだろうと不安に感じているのに係らず、実際に自分から積極的に求職活動をする人が案外少ないという事実です。学部の学生は就職活動で100社とか200社を受けるという話をよく聞きますが、博士課程の学生でそこまでの職を求めるのに意欲的な人間というのはあまり見かけません。やはりポストを求めるならせめて10や20程度の公募に応じてみるべきなのではないでしょうか?

以上、問題点を箇条書きにまとめると、

@教官も学生も博士課程を修了すると大学に残るのが当たり前だと思っている。

A博士課程には、社会に出る自信のないものが多い。

B博士課程の学生には求職活動に積極的でないものが多い。

この3点が相互にからみあって、博士の就職難をどうしようもない現状にもっていっている気がしています。Aに関しては、直接的に解決するということは難しいと思いますが、@Bに関しては、明日からでも解決に向けて取り組むことが可能なことなのではないかと思います。情けない話ではあるのですが、博士課程の学生をもつ指導教官たちが、自分の学生の尻を引っぱたいてでも就職活動をさせるということが大事になるのではないかと思います。これまで、大学では、指導教官から職をあてがってもらうのが当然のように認識されており、学生自身もそれを甘んじて受け入れていました。しかし、指導教官が自ら就職活動をさせることによって、学生に対して、そのような時代は終わったんだということを示すことにもなり、学生の職に対する主体性を呼び戻すことができるのではないかと感じております。

博士課程の就職難については、企業の博士課程の学生に対しての偏見や大学の教育・研究のあり方、大学組織のあり方が問われていることが多いですし、これらのことが教官や学生の意識に影響を大きく与えている面もあるとは思います。しかし、これらの議論は、現在、博士課程に在籍している学生に対しては何の効果もないものです。まずは、一番割りを食っている学生本人の意識の改革とそれを指導する教官の意識の改革という個々人ではじめられることから始めていくのがよいのではないかと思います。

最後に私自身の就職活動について簡単に述べさせていただきたいと思います。私は核融合を研究しているのですが、就職先としては、全く縁もゆかりもなかった化学メーカーに決めました。私の専門はまともに考えるとアカデミックの世界でしか就職先を探せないようなものなのですが、私自身がその分野から離れて新しいことを始めたいということが分かってもらえたため、内定をいただけたのかもしれません。企業は博士の学生を偏見の目で見ているということを言われます。確かにそのような企業も存在するのでしょうが、私が受けた会社に関しては、博士に対しては並々ならぬ期待をしているという会社が多かったように思います。修士の学生に対しては30分程度の軽い面接しかしない中で、私に対しては2時間程度の面接をしてくれてじっくりと評価してくれたり、4時間くらいにわたって、食事を摂りながら、会社の話をしてくれたり、リクルータの人が毎晩のように電話をかけてきてくれて話を聞いてくれたりと、どちらかというと、特別よい待遇を受けていたような気がします。

あれこれと悩まずに、とりあえず就職活動をしてみたのが結果としてはよかったのかな感じています。

以上。

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