2003.7.7  「データと体感」



「平成14年度の博士課程修了者の就職率(全修了者のうちの就職者の割合)= 56.4%」この数字を多いと思いますか?少ないと思いますか?ちなみに、同年度の大学卒業者の就職率が、56.9%、修士課程の修了者の就職率が66.4%です。人によっては、「こんなに少ないのか」と思う人もいるでしょうし、「え!こんなにいるの!」と思う人もいるでしょう。私にとっては、56.4%というのは、その数字だけを見ると悪い数字だなと思いましたが、学部や修士の修了者と比較したら、それほどでもないのかなと思いました。ちなみに、私は、このようにあれこれと調べはじめる前までは博士の就職率はもっと悪いものかと思っておりました。

「博士の就職難」と聞いたとき、果たして、すべての博士の方が「その通り」と思うのでしょうか?たとえば私の場合。周囲に博士終了後、すぐに就職なされた方はいませんでした。それを見てきた私は、博士というのはそうやって1年くらいは卒業後、職探しをしないといけないものなのかという感覚をいだいておりました。それを見てきた私はやや恐慌状態に陥っておりました。でも、ちょっと考えてみたら、就職率が56.4%もあるわけですから、どこかには博士課程を修了後にすみやかに次の活躍の場を見付けているかたもいるということになります。となると、たとえば、産学連携を積極的に進めていて、博士課程の学生も積極的に企業との共同研究に駆りたてており、そういった関係から博士の方々が容易によいポジションを手に入れている研究室だったら、後輩達にとっては、博士に進むのもあるいは人生にとってメリットのあることに感じられるかもしれません。

自分も含めて、案外、人間というものは、視野が狭いし、また視野を広げるための労をとらないものだなと思います。自分の周りにオーバードクターがあふれていたら、後輩にとっては、ドクターに進むことは人生の墓場のように感じるでしょうし、自分の身近のドクターの方々が、企業や研究機関から引く手あまたで、社会に出て第一線で活躍しているようだったら、ドクターに進むことがバラ色の人生を保障しているようにも感じられるでしょう。

自分が活躍の場に恵まれている人達に囲まれている場合は、あまり深く考える必要はないのかもしれません。でも、自分の周りに自分自身を激励できるような材料がない場合も、まずは冷静になってみる必要はあると思います。データから自分の置かれている状況を知ることができるでしょう。それに、自分のごく身近から一歩遠くを見てみることで、さらに自分の状況について、他の視点を得ることもできると思います。

データということに関して言えば、私の場合は、自分の大学の博士課程の就職率について調べたり(これは、なかなか自分を勇気付ける内容でした。ちなみに、博士課程の内定率100%でした(内定率=就職者の数/就職希望者数(就職希望者数は必ずしも修了者数と等しくはなりません))、自分の専攻や自分の専攻と類似の専攻の博士修了者の進路を洗ったりと、いろいろとデータをあたっておりました。どのデータも公表されているものではないのですが、大学の学生課に問い合わせると親切に教えてもらえました。こういった作業を通じて、自分自身の状況をやや客観的に見つめられるようになったような気がします。

また、人との出会いもとても大事です。自分の周りが悲観的な人ばかりだったら、やはり気がめいってしまうものだと思います。ドクターの場合だとなおさらです。マスコミから、文部科学省まで、「博士の就職難」を唱えているのですから、そういうものだと嫌でも思ってしまうでしょう(実際に就職難ではあるのですが・・・)。でも、みんながみんな就職できないわけではないですよね。中には、よい材料をもっている人がいるわけです。そういった人を見付け、その人達の生き様を聞き、見させてもらえたら、自分自身もただ状況に流されるだけではなくなんとかできるのではないかと思えるようになると思います。

博士課程というと、やはり絶対数が少ないこともあり、なかなかよい出会いを得るのは難しいとは思います。私は、このホームページ「博士の生き方」が、博士課程の人達に、自分の状況を冷静に見つめられるデータを与え、よりよい人生を歩んでいる人達との仲介を「さまざまな生き方」や掲示板を通してできたらすばらしいと思っております。

どうもまとまりのない内容になってしまいましたが、体感というものは人によってとても違うものですし、体感とデータというものは人によって、違和感を感じるものです。つまり自分のごく身近の状況だけで物事を判断すると誤ることがあるということです。自身の不幸な状況にこもることなく、前に一歩でてみましょう。そのための手伝いをこのホームページを通してしたいものです。


もどる