ポスドク・博士学生のキャリアパスに関する意見交換会(大阪)報告


日時:2007年12月22日(土) 10時〜12時50分

場所:大阪大学先端科学イノベーションセンターVBL棟 5階 会議室

参加者:

8名

目的:

最近、ポスドク・博士学生のキャリアパスに関する問題は、学会のシンポジウムやマスコミなどでよく取り上げられるようになっており、この問題について議論をしていこうという雰囲気があらわれつつある。しかし、現状では、その取り上げられ方は単発的であり、議論の広がりと深まりはみられていない。そこで、まずは参加者相互で各人の問題意識(その前提も含めて)を共有し、継続的に議論を重ねていくことで、問題意識を深め、課題を明らかにしていくことはできないだろうかと考えた。今回は第一回目の会合であり、参加者各人の立場からポスドク・博士学生のキャリアについての問題意識に関して考えを述べていただいた。

配布物:

概要:

今回、電気系・情報系、生物系、建築系と幅広い分野から参加していただき、それぞれの分野でポスドク・博士学生のキャリアパスについて認識している問題について大きな相違があることがわかった。また、同時に研究環境について共通の問題も抱えていることがわかった。

  1. 博士学生の就職、ポスドクのキャリアパスに関して:

    電気系・情報系においては、博士課程を出た人材が企業に就職することが当然となっており、ポスドクのキャリアパスに関してはあまり認識したことがないということであった。

    生物系に関しては、理学系においては、学生のアカデミック志向が強いということであった。しかし、現在では、企業への就職の厳しさから博士号をキャリアアップのための資格として捉える人も出てきており、ベンチャーキャピタル、営業職などのノン・リサーチ職を目指す人も出てきているとのことである。また、工学系の生物に関してはアカデミック志向はそれほどでもなく、アカデミック分野も企業就職も並列的に考えているということであった。

    建築系に関しては、企業においても、設計事務所においてもあえて博士を雇う必要性がなく、博士学生、ポスドクとも大学の中で滞留している状態になっているとのことであった。

  2. 博士課程での問題:

    共通の事柄として以下の事柄があがった。

    また、理学部生物系の場合、わき目も触れずに研究に邁進することが学生のキャリアパスにとってもいいことだと考える風潮もあり、学生もそういうものだと考えているため、そこから外れたときに回りに相談し合える人間に出会えないという指摘もあった。

  3. 研究環境についての問題:

    生物系においては、研究費獲得のため、とりあえず医療や健康に役に立つということを言うが、実際にそれが役に立つには長い年月と努力が必要だということがわかっている。そのため、自分の研究とマッチする企業があったとしても、そこに行くことに関しては、自分では力不足と感じて及び腰になってしまうことがある。

    生物系の場合、何かの役に立つというよりも、好奇心からというような宝探し的な感覚で研究をしている傾向もあるということであった。

    また、共通的な事柄として、昨今の競争的な研究環境の中で、博士課程の学生やポスドクが使い捨てにされている現状もあるのではないかという指摘もあった。

  4. 企業における博士の採用について:

    生物系についても、電気系についても、博士課程での3年間が修士課程を出てすぐに企業に入社しての3年間以上のものである必要があるとのことであった。

    建築系においてはゼネコンでも設計事務所でもはじめから博士をとろうという意識は希薄だということであった。これは、業務上、博士を必要としていない、もしくは年齢がいってしまうと仕事についていくのが厳しいからということであった。

  5. 社会システムとポスドク問題:

    国立大学の法人化以降、ポスドクが急激な勢いで増えていっているとのことである。

    90年代にキャッチアップからフロントランナー型への転換が指向された結果、大学院が拡充され、ドクターが増えたが、大学においてそのような急激な転換への対応が追いつかず、また、産業界においても彼らに活躍の場を与えることができなかった。

    現在は、産業界においては、イノベーションの種は海外のベンチャー企業を買うことで得るという考えになっており、若い人間を育てて中核的な科学技術の担い手として育てていこうという意識が希薄である。

    大学から社会へというパスをどのように構築していき、フロントを切り開いていけるシステムを作り上げていくのか議論が必要であるという認識も示された。

博士学生・ポスドクのキャリアパスを考える場合には、個々人のレベルで考えることも必要であるが、社会をどのようにして豊かにするのか、研究システムをどのように豊かにするのかという点でも検討をしていく必要があると考えている。

以下に、各参加者の発言をまとめたものを記す。

まとめ:

今回の意見交換会を通して、研究分野によって、問題として考えていることには共通していることと各分野固有の事柄があることがわかった。

例えば、共通の問題として挙げられたことに、研究室のタコツボ化という事柄が挙げられるが、電気系の先生から示された分野横断型のプロジェクトの実施など、それに対応した試みもなされており、分野を超えて成果を共有できる可能性もある。

また、博士のキャリアパスの問題が論じられるときには、学生個人の問題に帰せられたり、大学の教員の対応の問題に帰せられたり、企業が採用しないのが悪いというように、何のためにキャリアパスが改善されないといけないのかという視点での議論が軽視される傾向がある。

今回の議論の中で、社会システムの中で、博士号取得者がどのような役割を担うべきと考えられているのかという視点が与えられたが、このような視点も踏まえて議論がなされる必要があると考えられる。

今後、継続して意見交換の機会をはかっていきたいと考えている。



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