第38回:各国立大学のキャリアサポート体制(2006.8.13時点)


3週間ほど前になるのですが、このホームページの掲示板にもよく書き込みをしてくださっている お さんから、各国立大学のキャリアサポート関係の部署のURLの一覧をいただきました。今回、私なりに、各国立大学の学生(特に博士課程の)に対してのキャリアサポート体制に関して、点数をつけてみたので、一つ参考にしていただけたらと思います。

各国立大学のキャリアサポート体制に関しては、各大学の取り組みがどの程度の成果を挙げているのかはホームページを見ただけではわからないので、外部の人間がアクセスをしたときに、情報にアクセスがしやすいかどうか、その大学の卒業生の進路がわかるかどうか、キャリアサポートをどのように位置づけているかが理解できるかどうかという、情報の公開度を評価することにしました。

情報の公開度を評価することによって、各大学が、学部生、修士、博士の学生のキャリアサポートをどのように位置づけているのか、大学が学生の教育と就職の関係に関してどれだけ考えているのか、またその自分たちの思いをどれだけ熱心に社会に問いかけているのかという一つの判断を与えることができるのではないかと考えます。

上記のような考えから以下の7つの項目に関して評価をしていこうと思います。

  1. 博士課程修了者の進路情報を掲載しているか(掲載されいる場合「○」掲載されていない場合「×」)
  2. 修士課程修了者の進路情報を掲載しているか(掲載されいる場合「○」掲載されていない場合「×」)
  3. 学部卒業生の進路情報を掲載しているか(掲載されいる場合「○」掲載されていない場合「×」)
  4. 就職情報へのアクセスのすばやさ(1クリックでアクセスできる場合は「○」2クリックでアクセスできる場合は「△」、3クリック以上かかる場合は「×」)
  5. 博士課程の学生への就職支援についての言及があるか(言及がある場合「○」ない場合「×」)
  6. キャリアサポート関連部局の学内での位置づけへの言及(言及がある場合「○」ない場合は「×」)
  7. キャリアサポート関連部局と学内他部局との連携の記載、暗示、もしくは就職担当者の委員会の存在の記載(記載がある場合「○」、ない場合「×」)
No.項目No.1234567備考
1北見工業大学就職情報×××××
2帯広畜産大学××××××各学科ごとに就職支援おこなう
3小樽商科大就職支援室×××××
4北海道大学キャリアセンター調査時、休止中
5室蘭工業大学キャリアサポートセンター×
6弘前大学学生就職支援センター×××××
7岩手大学××××××学部ごとに就職支援をおこなう
8秋田大学学生支援総合センター××××求人票は各学部の就職担当教官に直接郵送
9東北大学キャリア支援センター×××
10宮城教育大学調査時、休止中
11山形大学就職課××××学部ごとに対応
12福島大学就職の広場×ホームページリンクぎれ
13茨城大学××××××
14筑波大学就職情報提供システム×××進路統計に関して産業別・学科別まで詳細
15宇都宮大学就職・進学について××××
16群馬大学××××××学部ごとに対応
17埼玉大学学生支援センター×××××学部ごとに対応
18千葉大学就職情報室××××××学部ごとに対応
19東京大学キャリアサポート室××キャリアサポート室はセーフティーネットという位置づけ
20東京外語大学就職支援室××××
21東京学芸大学就職情報×××××
22東京農工大学進路・就職相談室×××進路データは統計関係のページ
23東京芸術大学×××
24東京工業大学学務部学生支援課×××進学データは統計関係のページ
25東京海洋大学進路指導情報室×××学部ごとに対応
26お茶の水女子大学就職関連情報××××学部ごとに対応
27政策研究大学院大学就職関連の情報なし
28総合研究大学院大学 就職情報××就職情報は博士対象のものと判断
29電気通信大学就職情報インデックス××××各学科で対応
30一橋大学キャリア支援室××××
31横浜国立大学就職支援係調査時、休止中
32新潟大学進路(進学・就職)情報×××キャリア支援室立ち上げ物語掲載
33長岡技術科学大学資格・就職 就職窓口 ××××
34上越教育大学[キャンパスライフ]就職支援××教員養成でサポート室注力および学部と連携
35山梨大学教学支援部教務課進路支援室××××
36信州大学キャリアサポートセンター××××××
37富山大学×××
38金沢大学就職活動支援室×××××
39北陸先端科学技術大学院大学 就職支援室××就職支援室と各学科の就職担当との連絡網あり
40福井大学就職支援情報×××
41静岡大学就職情報資料室×××
42名古屋大学×××
43愛知教育大学就職担当者からのメッセージ×××教員養成に主眼
44豊橋技術科学大学調査時、休止中
45三重大学×学内での連携推進
46滋賀大学就職情報案内×××××
47京都工芸繊維大学 進路・就職情報×××
48京都大学キャリアサポートセンター×××××
49京都教育大学就職のページ××××就職担当教官の全学的な委員会あり
50大阪外語大学 就職情報×××××
51大阪大学就職・進学サポート×××××
52大阪教育大学 就職情報××
53奈良教育大学 就職支援室××××××
54奈良女子大学 就職情報××××
55奈良先端科学技術大学院大学就職関連のページ無、進路データは統計情報より
56和歌山大学 就職情報×××システム工学科のみ、博士課程進路データあり
57神戸大学×××キャリア関係のイベントで他部局も協賛
58兵庫教育大学××××××
59鳥取大学 学生センター××××××
60島根大学 就職情報調査時、休止中
61岡山大学 学生支援センター×××
62広島大学キャリアセンター××××キャリアセンターの位置づけに関して詳細
63山口大学学生支援センター××××××
64徳島大学就職支援室××××進路情報に、人数までは記していない
65鳴門教育大学進路・就職情報調査時、休止中
66香川大学 求人・就職情報を利用される方へ×
67愛媛大学×××××
68九州工業大学×××支援室の役割は低学年への対応中心、就職に関しては各学科対応
69福岡教育大学就職情報資料室×××教員採用試験対策で学部と連携
70九州大学「進学・就職」××博士対象のキャリア支援センターへのリンクあり
71佐賀大学就職相談室××××××
72長崎大学 就職情報室案内××××××
73熊本大学 キャリア支援課××××全学的な進路支援委員会あり
74大分大学××学部ごとに対応
75宮崎大学×××××学部ごとに対応
76鹿児島大学××××××
77鹿屋体育大学 就職支援情報××××
78琉球大学就職センター××××各学部から就職センターに教官が所属

表1:各国立大学のキャリアサポート体制への評価(2006年8月13日調査時点)


まず、表を見ていて感じるのは、学部・修士課程の進路情報を掲載している大学は多いのですが、博士課程の進路情報を掲載しているのは78の大学の中で23大学と3分の1未満となっていることだろうと思います。大学として、学部生、修士課程の学生は就職支援の対象として考えているが、博士課程の学生に関しては、その対象とはしていないという姿勢を表しているのではないかと思います。また個人的に驚いたこととしては、博士課程の学生が多いと思われる京都大学、大阪大学、広島大学などで、博士課程の進路情報がホームページ上に掲載されていなかったということです。また、ここに挙げた3大学では、特に理工系の場合は、修士課程を出て就職をするというケースが主流になっていると思うのですが、修士課程の進路情報に関しても掲載されていなかったのが、不思議な感じがしました。

また、気になったのは、キャリアサポート関連部署の学内での位置づけがあやふやになっているということでした。ホームページ上でキャリアサポート関連部署の位置づけに言及されていない場合には、原則として各学部や学科でも就職支援をしているという場合が多かったのですが、そのような中でキャリアサポート室においても、就職情報集めなど同じような業務をおこなっているというのはどういったことなのだろうと思いました。

キャリアサポート関連部署の、業務としては大きく分けて、就職情報の収集と、キャリアセミナーの開催、個別のキャリア相談の実施の3点が挙げられている場合が多いのですが、彼等が学内でこのような取り組みをおこなう意味やメリットはどのようなことが挙げられるのだろうかと思いました。地方の国立大学の場合は意味があるようにも思うのですが、都市部の大学の場合は、類似のセミナーが、就職情報会社によって近所で開催されることは多いですし、就職情報に関しても就職広告サイトが発達しているので、それを利用すれば済むように感じます。どうも、個人的な印象としては、キャリアサポート関連部署の多くは、ハローワーク的なものでしかないように感じました。

多くの大学においてキャリアサポート部署の位置づけが不明確な中で、位置づけを明確にして活動をしている大学も存在していました。個人的な印象としては、教育大学が位置づけを明確にしている場合が多かったように思います。教育大学の場合は、教育目標(教師を育成する)が明確なことから、キャリアサポートやキャリアサポート室の位置づけも明確にしやすのではないかと思いました。したがって、キャリアサポート室と学部との連携も、教師を輩出するという目標に沿っておこないやすい環境になっているように思いました。

その他のキャリアサポート室の位置づけに言及しているところでは、室蘭工業大学、東京大学、東京外国語大学、新潟大学、三重大学、香川大学、広島大学、九州工業大学、大分大学、琉球大学が挙げられます。これらの大学では、専任の教官を置いていることに触れているケースが多かったのと、学内組織での位置づけ、キャリアサポートセンターの目標について言及をしている場合が多かったです。

表1の項目7に関しては、キャリアサポート室と学部との連携は、教育大学において教員採用試験に向けての講座をもつとか、教員になるための心構えを醸成するための講座の開講など、進んでいる面があったのですが、その他の大学の場合は、キャリアサポート室をあるいは事務局のような形にしているのかもしれませんが、進路に関しての各学部の就職担当教員の委員会をもって、就職に関しての方針を年度ごとに決めていくという形態のものが多かったように思います。

今回、博士課程の就職について言及をしていたのは、九州大学のみでした。九州大学の場合は、今年度からポスドクの就職支援を目的とした科学技術関連人材のキャリアパス多様化事業にあたっているのですが、その事業に関するリンクがキャリアサポート関係のホームページに貼ってありました。ポスドク・博士課程の就職に関しても、学部・修士の就職を扱う学務部キャリアサポート室を事務局として取り扱うことになっており、学部や修士との関連性を持たせた取り組みも可能なのではないかということと全学的な取り組みがおこないやすいのではないかという期待をもつことができます。

これまでは、学部ごとにおこなわれてきていた(それほど熱心には行われてきてなかったかもしれませんが)、どのような学生を輩出するのか、育成した学生をどのような分野に進出させたいのかといった事柄について、今後、大学として方向性をもっていくことが必要なのではないかと考えます。そのような中で、大学のキャリアサポート室の役割というのは、大きくなっていくのではないかと思います。学内のハローワークとしてのみの地位にとどまるのではなく、大学としての方向性と社会のニーズ、そして、各学部・学科の教育方針との調整をおこなう立場も有していく必要があるのではないかと考えております。

現状では、博士課程の修了者は、キャリアサポート室の扱う範囲を超えてしまっている場合が多いようですが、今後の知識社会の担い手である博士を円滑に社会に送り出していくことも大学の存在意義を高める上で必要なこととなってくるでしょう。キャリアサポート室としてどのような取り組みが可能であるのかぜひ考えてほしいものです。

今後も定期的にチェックしていけたらと思います。




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