第37回:博士が足りない


第36回において、地方ではどうもポスドクへのなり手が少ないらしいということをお話しましたが、次にどうも工学系の研究科においては博士課程への進学者数が少ないことが問題らしいということにも触れておきたいと思います。

まずは、平成17年度における修士課程修了者数に対しての進学者数の割合を示します。ここで示している図で、進学者数が全般的に実際の博士課程への進学者数と比べると人数が少なくなっておりますが、博士課程進学者の中には修士課程を出てしばらくしてから博士課程に行くという人もいますし、6年制の医学部を出て博士課程に進学するという人は、ここでの進学者数には含まれないため人数があわなくなっております。

図1 分野ごとの修士課程修了者数に対しての進学者数の割合(平成17年度)

学校基本調査報告書より

図を見ると、工学分野において、修士課程修了者に対する博士課程進学者の割合が7%程度であるのに対して、理学が24%程度、農学が19%程度になっていることがわかります。特に、電気系と機械系における博士課程への進学率が極めて低いことがわかります。

ただ、この割合は、それほどおおきく変化してきているわけではなさそうです。

図1 分野ごとの修士課程修了者数に対しての進学者数と教員数の関係(H3,H10,H13)

学校基本調査報告書より

図2に、平成3年度、平成10年度、平成13年度における修士課程修了者数と進学者数、そして教員数の推移を示しております。ここを見ると、修士課程修了者に対しての進学者の割合は、だいたい同じ程度で推移しているのがわかると思います。平成3年度から平成13年度にかけて大きく変化をしているのは、教員数に対する修士課程修了者数の割合と進学者数に対する割合です。これは、教官数の変化がこの10年間で微増にとどまっているのに対して特に平成3年度から平成10年度について大きく変化していることによる影響と考えられます。また、工学系に関しては、元々学生に対しての教官の比率がそれほど大きくなかったにもかかわらず、特に修士課程修了者の割合が大きく増えていることがわかります。

工学部においては、元々、博士課程への進学者が少ないということは問題にされていたと思うのですが、ここ10年くらいの修士課程の拡大に伴って教官数が増えないということが、より博士課程の学生の不足感を大きくしている面があるのではないかと考えます。

つまり、特に工学系の研究科の場合には、博士課程に進学する学生の割合がそれほど増えないのに、教官の数も増えないため、教官の学生への指導に手がまわらない分を、博士課程の学生が研究室運営の中核を担う人材として補うということが出来にくくなってきているのではないかとも考えるのです。

修士課程の学生が増えすぎたことによって、指導が行き届きにくくなったということが、近年問題とされている修士課程レベルでの学生の質の低下ということにも結びついているのではないかとも考えます。

文科省が今後、講座制の一掃などの大学院改革を後押ししていくという記事を読んだりもしましたが、現在の教員数を増やすか、もしくは現在の教員数で教育をおこなっていける体制をつくることがで きなければ結局何もかわらないのかなと思います。

もしも、教員の数を増やすことができないのであれば、博士課程の学生が修士課程や学部レベルの学生の教育や研究にタッチしていく仕組みを研究・教育活動のひとつとして組み入れていくことが必要なのではないかと思います。

具体的には、博士課程の学生に対してどのように研究指導をしていけばよいのかに関して座学をほどこすのと定期・不定期なチェックをおこない、博士課程の学生がグループの学部生や修士課程の学生を導いてうまく研究成果を挙げていけるような体制を作り上げていくことがよいのではないかと思います(教官も研修に参加して方がよいでしょうけれど)。

博士課程に関しては、分野によっては就職先を探すにも一苦労するような現状ではあるのですが、工学系、特に電気・電子や機械系においては、企業のほうでも人を求めているという現状があるようです。今後、博士課程において何らかの改革をおこなっていくにあたっては、それぞれの分野において抱えている問題が異なるということを念頭においておこなっていく必要性があると思います。また、報道する側においても一面的な取り上げ方はせず、もう少し、踏み込んだ取り上げ方をしてもらえるとありがたいと思います。今のようなポスドク問題の取り上げられ方をされるなら、むしろ取り上げてくれるなといいたいところです。




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