第35回:縮小をはじめる博士課程


博士課程を縮小していくべきということを述べる方々もいらっしゃるようですが、そのような方々が求める方向に博士課程が向かっているようです。

平成4年度から平成17年度まで(分野別の推移に関しては平成5年度から平成17年度まで)の博士課程への進学者の推移を以下のグラフに示します。

図1 博士課程への進学者総数の変化

学校基本調査報告書より

図2 分野ごとの博士課程への進学者数の変化

学校基本調査報告書より

図1を見てわかるように、平成15年度の進学者数が18232人をピークにして、平成16年度は17944人、平成17年度17553人と徐々にではありますが、減少する傾向にはあるようです。ただ分野ごとの進学数の推移を見ていくと、保健分野(中でも特に医学部の増加)と学校基本調査の中で「その他」として未分類にされている新設学部での増加が急増しているのに対して、旧来の理学・工学などに関しては、ほぼ横ばい状態をこの10年にわたって続けていることがわかります。そして、理学に関しては一度、平成13年度に減少に転じておりますが、工学・理学とも、平成15年以降、再度、減少に転じているのが理解できると思います。

個人的には、「その他」の分類としてどのようなものが含まれているのかを知りたいところではあるのですが、学校基本調査だけではよくわからないというのが現状です。ただ、「保健」も「その他」も、平成15年あたりを境にして減少に転じているか、もしくは増加傾向に歯止めがかかりつつあるのがわかると思います。

博士課程への進学数の増加に歯止めがかかった要因としては、博士課程の新設が恐らくは減ったということが一因としてあり、その上で、博士課程や博士課程を出たら多くの人が就くポスドクという仕事に魅力がないということが近年のマスコミがポスドク問題に興味をもってしまったということで、広く浸透してしまったことにあるのではなかろうかと予想をしております。

一個人の選択として、学生が博士課程への進学やポスドクになることを避けるということは当然のことかと思うのですが、研究開発を担うはずである人材を育成する博士課程が魅力的なものではないと一般的に認識されることは今後の日本や地域の発展においてはよいことではないのではないかと感じております。

しかし、学生やポスドクを受け入れる大学や研究機関からは、それほど現在の博士課程のあり方やポスドクの待遇について危惧を感じているようには私は感じることができずにおります。

例えば、最近、文科省の進めるポスドクの就職支援事業である「科学技術関係人材のキャリアパス多様化促進事業」の委託先が決まったのですが、のんきなもんだなと感じるものが大半を占めております。取り組みの概要を読んでの感想なので、ひょっとしたらもっとすごいことを行うところもあるのかもしれませんが、概要を読んだ印象では、8機関中、6機関においては、ポスドクに対して「とりあえず再就職先を探してやればいいだろ」という程度の場当たり的な対応しか読み取れませんでした。

この就職支援事業は本来の目的としては、大学の教官や研究所のグループリーダーたちの意識改革に結びつかせることにあったそうなのですが、応募の申請書を読む限りにおいてはそのようなことを感じることはできなかったので、結果としてあまり大学に改革を迫るようなものとはならなかった側面もあるのかもしれません。

博士課程の学生やポスドクから、労働力として搾取されているという話はしばしば聞くことはありますが、そのように感じさせるということはやはり研究室内で何か問題があるのではないかと感じます。「しんどいけれど、がんばれば、がんばっただけ、自分の身につくことがある」と思わせるようにならないとまずはいけないのではなかろうかと思います。




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