第34回:バイオ系の就職難は構造的な問題か?


このごろは、博士課程の学生やポスドクの就職難がマスコミでもしばしば取り上げられるようになり、来年度は、国からも予算が下りそうという状況になってきております。

博士課程の学生やポスドクの就職難に関しては、実質的に、就職活動をしない「幸せは誰かが運んでくれると信じている」人たちが案外多いことが原因ではないかと感じてはいて、概ね、そのとおりではないかと思っているのですが、バイオ系に関しては、どうもそれだけではない、もっと社会構造といいますか産業構造上の問題があるように感じております。

もっと詳細なデータなり、もっと詳細な調査が必要だと思うのですが、バイオ系の就職難を示唆するデータを少し古いのですが示したいと思います。

図1 平成13年度・重点4分野・分野別・研究主体別研究費

重点4分野の研究費は5兆円−「科学技術週間」にちなんで− より抜粋

総務省統計局ホームページ

第二期科学技術基本計画に基づいて、ライフサイエンス分野、情報通信分野、環境分野、ナノテク分野に重点的に予算が配分されており、特に、大学や非営利団体、公的機関での研究費において、ライフサイエンス分野は圧倒的におおいことがわかります。

また、企業の研究費と、大学・公的機関の研究費を比べると、情報通信分野、環境分野においては、それぞれ企業:大学・公的機関=91.5%:3%、72%:21.1%となっております。また、ライフサイエンス分野とナノテクノロジー分野に関しては、企業:大学・公的機関=47.9%:48.6%、56.2%:36.3%となっております。

潤沢な研究費があるということは、それだけ研究が盛んで恐らくは研究者の数も多くなるだろうと考えられるのですが、仮に研究費の額が、研究者の数と比例する関係にあった場合に、ライフサイエンス分野とナノテクノロジー分野においては、企業の研究員数に比べてかなり多くの研究員を抱えてくることになるかと思われます。

大学や研究機関に対しての過剰なまでの国からの研究投資と、それに伴う学生や研究員の増、そして、バイオテクノロジーの進歩が、実際の産業にはまだまだ浸透するには至っていないという現状が、学生やポスドクの産業界への転出を難しくしているということもあるのかなと図や周囲の様子を見て感じました。

ナノテクノロジーに関しては、大学の研究費も多く、係っている人間も多いかとは思うのですが、多分、ナノや材料といったことにこだわらなければ、新天地でまた研究に取り組むことも可能ではないかと思います。

現状においては、多くのポスドクや博士課程の学生が企業に目を向けていないため、少数の企業に目を向ける学生・ポスドクが、ライフサイエンス関係で、なんらかの形で企業で研究職に就ける可能性は高いと思うのですが、仮に、上で考えたようにライフサイエンス分野の就職難が構造的な問題を含んでいる場合、将来的に、学生やポスドクが企業で研究職に就く道を選ぶことが増えた場合に、産業サイドで受け付けられずあふれるという可能性もあるのではないかと危惧いたします。

ただ、今回示した一枚の図だけでは、確たることは言えず、ライフサイエンスの場合は、研究にかかわっているのが医者の場合もあるでしょうし、医者の免許を持っている博士課程の学生という場合もあると思いますので、大学の研究費と企業の研究費の過去からの経年変化を見たり、大学で研究に係っているのがどのような分野や背景を持っている人間であるのかということを精査するといったことも必要になるように思います。




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