第31回:35歳の壁は企業にも存在する


2005年11月2日の毎日新聞のネット版で、「理系白書'05:第3部 流動化の時代/1 漂う"ポスドク"1万人」という記事を読みました。ポスドク問題についての大雑把なことが載っており、現在34歳の天文学のポスドクの方と、38歳のメーカー勤務後、ポスドクに転じた方が紹介されておりました。ポスドクの経済的な状況についての全般的な議論のあと、ポスドクの生まれた背景について、どうしてポスドクの採用条件で「35歳以下」を条件につけているところが多いのかということについて述べられておりました。

記事の中で筑波大学の小林信一先生が述べるには第二期の科学技術基本計画に「30代半ばまでは流動的に」ということを書いたことを額面どおりに受け取った研究機関がポスドクの公募をする際に「35歳未満」という条件を設けたとのことです。

バカバカしい理由ではあるのですが、30台半ばまでに大学や公的研究機関で終身の職を得ることができず、例えば企業に転進を図る場合、35歳というのは、比較的すんなり採用されるかそうでないかの重要な分岐点になっているのではないかと思います。

というのは、企業が中途採用で人を雇う場合に、「35歳」というのは、現場の研究者・技術者として採用するのか、もしくは管理職として採用するのかの一つの目安として考えているためです。

参考資料を以下に示します。

図1 職種別中途採用者の採用の際の年齢(平成16年・1月)

平成16年度・労働統計要覧

厚生労働省大臣官房統計情報部 編

図を見ていただくと、研究者・技術者の中途採用は、30歳〜34歳の年齢層で最多となり、その後採用企業数が激減しているのがわかります。それに対して、管理職の採用に関しては、35歳以降で急に増えていることが示されています。

今後どのような社会になっていくのかはわかりませんが、通常、企業においては、30代後半から40代前半にかけては順当に出世をしている人は、管理職になっていく時期にあたります。そのため、30代後半の人を中途採用をするにあたっては、管理職としてかもしくは、管理職候補としての採用になってくるのではないかと考えられます。30代後半での企業への転進は、論文数や専門分野の知識・経験だけでは特別な場合を除いては採用への道のりはなかなか難しくなるのかもしれません。

ポスドクにとっての35歳の壁は、ある意味では、企業への転進も視野に入れて考えている方々にとっては、「夢」からいつ覚めたら、また別の人生を歩むことができるのかのギリギリの線ととることもできるのではないかと思います。

私自身はしばしば就職活動の相談にのっているのですが、個人的な印象としては、ポスドク一回目くらいまで(30代前半)なら、企業への就職は思っていた以上に大丈夫そうだと感じています(もちろん本人たちの努力あってこその採用だったのですが)。

ポスドクを二回以上経験されている方というのは、現在までのところ相談に応じた経験がないので実感としてはわからないのですが、年齢が高くなるほどに企業への就職は本人の資質によるところが大きいとは思うのですが一般的に厳しくはなっていくのではないかと思います。

11月2日の理系白書の最後はポスドク量産の政策に対してポスドクたちが職にあぶれるということについて、政府が無策だったことにやや批判的です。大量の博士を養成してどうするのかその戦略がなく、ドクターたちの能力を社会に還元できていないという点で政府の無策は責められるべきですが、「ポスドクたちが仕事にあぶれてしまうのはかわいそうじゃないか」という視点で政府を責めているのであればそれは違うのではないかなと考えています。

修士課程から博士課程に進んだとき、博士課程在学中にふと自分の現状に疑問をもったとき、博士課程からポスドクになったとき、ポスドクとして就業中にふと自分の現状を不安に思ったときなどなど、自分自身にとって人生の転機になりうるときというのが何度もあったのではないかと思います。そのときどきで、違った人生を歩もうと思えば歩むこともできたはずですし、多くが違う人生を歩むだけの能力のある人たちだと考えるからです。周囲から同情されるのは悔しいことだとは思いませんか?

今、ポスドクをされていたり、博士課程に在学していたりして、後悔をしているということであれば、これからでも失敗を取り戻すのは遅くはないと思います。過去の失敗は悔やむことしかできませんが、これからいい人生を歩むかどうかは、今の各人の選択次第なのですから。




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