第29回:大きい会社か小さい会社か〜給与面から考える〜


7月から、「博士のための職業紹介事業」のモニターを募集しております。告知から2ヶ月以上が経過して実際に応募してくださり、私たちと就職活動に向けての取り組みを始めてくださる方々もいらっしゃいます。

会社選びには人によってさまざまな基準があり、一概に何が正しいと言えるものではないですし、本当に、合うかどうかということは実際に入社して働いてみないとわからないものではないかと思います。ただ、判断のための材料は多いほうがよいのではないかと思っております。例えばある会社について判断をするとき、企業規模、所属する業界の中でその会社の状態(経営状態、経営の方針、給料、福利厚生といったこと)はどのようなものであるのかといった比較ができる情報をもっておくのはよいことなのではないかと考えております。

今回は給料の面で大きい会社と小さい会社でどのように異なるのかを取り上げます。最近、マスコミで一種の町工場礼讃の報道が多々なされております。だいたいどの内容もステレオタイプなもので、大きな会社で働くと歯車になってしまうが、小さい会社であれば、自由に働くことができるといった内容になっております。もちろん、町工場の厳しい現実を真摯に伝えようとする報道もたくさんあるにはあります。しかし、就職は厳しいのではないかという思いを抱いているとき、町工場はすばらしいといった報道に一縷の希望を見出してしまう人もいるのではないかと思います。給料の面でも会社によって、年齢や業績によってまちまちということはあるでしょうけれど、これから就職活動をはじめる人たちに今回の資料を一つの判断材料として使っていただけたらと思っております。

まずは早速、製造業全体での従業員規模別の年間現金給与支払額の比較を示したいと思います。

図1 一人当たりの給与支払額(製造業全体)

平成14年・工業統計表 産業編(概要版)

経済産業省経済産業政策局調査統計部


図1で、示される従業員数というのは、一つの事業所における常用労働者、個人事業主と無給で働く家族を含んだ数字です。常用労働者の中には、正社員、親会社からの出向社員のほかに、人材派遣会社から一ヶ月を超える期間を決めて派遣されている派遣労働者も含まれています。また、ここでいう事業所というのは工場、製作所、加工所といわれるような一区画を占めて主として製造・加工をおこなっているところを示しており、一つの会社で複数の工場をもっているような場合は、それぞれの工場を一つの事業所と数えています。

一つの事業所内には、さまざまな職種の人たちやさまざまな役職、年齢の人たちがいて、それの平均をとったのがこのデータなのですが、事業所の規模によって、給料に大きな差があることをわかっていただけると思います。例えば、従業員数が、50人〜99人規模の事業所の場合で、給与が390万円であるのに対して、従業員数が1000人を越えるところで、740万円程度となっております。事業所の規模によって給料に大きな格差があることをわかっていただけると思います。小さな事業所の場合でも、業績がいいところはいいようなのですが、そのような好業績な会社が統計の中にうずもれてしまうくらいに、零細・中小企業では、従業員に給料を出せないという厳しい現実があるように感じます。おそらく経営がいいとか悪いとかいう以前に、おそらくは儲からない構造というものが現在の中小の企業の中にはあって(いろいろと報道されていることではあるので、特に取り上げませんが)、その構造の中から脱却できた、もしくははじめからそういったしがらみにとらわれていない新しいベンチャー企業のようなところが儲けているということなのかもしれません。

給料であったり報酬といったものは自分であったり自分の仕事がどのように評価されているかをあらわす重要な物差しの一つであると考えております。高ければ高いほどよいものとも思いませんが、自分を周囲と比較したときに、自分が給与面で恵まれていないと感じることがあるとすればそれはあまりよいこととは言えないと思います。

また、中小企業か大企業かという問題は特に志のある学生にとっては永遠のテーマみたいなものであるようです。その昔、出光興産の創業者である出光佐三は、大学を出た後(当時の学士は現在の博士よりもはるかに価値がありました)、早く活躍をしたいと思い、石油関係の個人商店に入店します。彼はそこで、単身台湾に渡り、台湾での新しい販路の開拓に成功したりと活躍をするのですが、商店主から才能をねたまれるに至って、結局、自分はどれだけ活躍しても所詮は使用人に過ぎないということを悟り、やがてパトロンを得て、独立をするに至ります。結局のところ、中小企業がよいのか大企業がよいのかといったところに答えはないということを示すエピソードです。




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