第28回:フリータ問題としての博士の就職問題


博士卒無業・ポストポスドクの問題というのは、高校卒や大学卒の新卒フリータの問題と重なる一面もあるのではないかと思います(不定期雇用から正規雇用されるようにするにはどうやって彼らを導くのがいいかとか、そのためにどのような支援をしたらよいかとか)。そして、博士卒無業の問題を新卒フリータ問題の一つとしてとらえたとき、規模を考えると世間様からすれば案外たいした問題でもないのではないかと感じつつあります。そのことを今回は示しておきたいと思います。

初めに、現在、社会問題と化してきているフリータ問題の規模がどの程度なのかをグラフで示したいと思います。

図1 フリータ数・フリータ比率の推移

平成15年度・国民生活白書


フリータの定義は、国民生活白書によると、「15歳から34歳の若年(学生と主婦を除く)のうち、パート・アルバイト(派遣を含む)及び働く意志のある無職の人」ということになっています。

図1で、フリータ数が、増えていっていて、平成13年度においては、400万人に達しています。現在ではさらに増えて、一説によると470万人のフリータがいると言われています。また、フリータ比率というのは、学生・主婦を除く若年人口におけるフリータの比率をあらわすもので、こちらは平成13年度で20%を越えており、若年人口の5人に1人がフリータという時代を迎えていることがわかります。しかも、フリータ比率のこの10年での伸びが著しいこともわかっていただけると思います。

では、このフリータ人口に毎年何人の新卒フリータが入ることになるのでしょうか?新規高卒・大卒フリータ、新規博士卒無業者数の推移を示します。

図2 新規フリータ数の推移

新規高卒・大卒フリータ数:平成15年度・国民生活白書より

新規博士卒無業者数:学校基本調査報告書より


博士の数が高卒・大卒に比べて少ないので、博士だけ拡大して載せます。ここで博士卒無業者と呼んでいるのは、卒業年度の3月末日で就職先を確保していない方に進路不明の方を含めております。そのため、実際は、もう少し少ない数になるのではないかと思います。

図3 新規フリータ数の推移(博士卒だけ拡大)


図2を見ていただいてわかるとおり、毎年生まれる博士卒無業者の数というのは、新たに生まれる高卒・大卒フリータの数に比べるとせいぜい数%程度のものであります。このようにフリータ問題として博士の就職問題を捉えたとき、その影響はあまり大きなものにならないことがわかります。このことは頭の片隅に入れておいてもよいことであると思います。

博士の就職問題に関して、「ポストドクター等一万人支援計画」がなければもう少し状況はひどいものになっていたと思われます。例えば、平成14年度にこの計画に計上された予算は479億円、支援を受けたポスドクの人数は11,127人にのぼります(文部科学省・科学技術学術審議会・第13回人材委員会資料より)。これに対して、フリータ対策に計上された予算はいくらになるでしょうか?厚生労働省のホームページに記されてあります平成16年度の予算をみますと596億円を計上しています。ポスドク支援計画では、予算がポスドクの給料に使われ、厚生労働省のフリータ対策では、予算がフリータの就職支援をおこなうための各種施策のために使われているという違いがありますが、雇用対策という点で見ると、博士に対してはかなり手厚く支援がなされていると思います。問題なのは、そういった支援を次のステップに有効に生かすためのなんらかの支援なりルートが確立していないこと(雇用したポスドクをどのように組織の中で生かすのか育てるのか、任期の切れたポスドクをどのように処遇するのか)、そして、ポスドク支援を受けている人たちの中にそのような支援を次のステップ(すなわち任期が切れたあとでどうしようかという問題)に生かすためにはどうすればよいのかについて旧来の価値観に縛られている人(どうしてもアカデミックでなければ嫌といったこと)が結構多いことなのではないかと考えております。




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