第26回:大学で学んだ専門分野と受け入れ先の需要の関係


今週月曜日(2004年1月26日)の日経新聞朝刊に学生の就職希望企業ランキングなどの新卒採用情報の特集号が折り込まれていたのをご覧になった方もいらっしゃると思います。学生の就職希望企業ランキングを見ていると、おおむね優良企業(財務状態の面で)が並んでいたりするものなのですが、中には思わず眉をひそめたくなるような瀕死の企業が入っていたりしてなんだかなと思ったりもしたものです。

その特集の中で、化学関係の会社の合同の広告で、化学系の卒業生だけではなく、さまざまな分野の人たちにも自分たちの会社に入社してほしいという旨のものがありました。その広告では、たとえばということで、電気系の人はこんな分野で活躍していますとか、人文系の人はあんな分野で活躍していますといったような例が示されていました。

就職先を選ぶとき、選択肢がほとんどないということもまま存在するものではあるのでしょうが、ぜひ、固定観念にとらわれることなく、自分の志向などから判断して、広い選択肢から、自分の就職先を選んで欲しいと考えています。

たとえば、自分の大学で学んだ専門を生かしていきたいと考えたとき、会社としては「化学」と分類されている企業であっても、電気関係の知識(プラズマであったり光であったり)が必要な研究開発をやっていたりするものですし、「電気機器」で分類されている会社であっても、生命科学の関係の開発をやっている企業というのは存在します。企業が大きくなればなるほど、何か少数の特定の分野の人だけが必要というのではなくて、さまざまな分野にまたがっているテーマを、さまざまなバックグランドをもった人たちが解決にあたるということになるのだと思います。

今回は、どの業界が、いったい、どんな分野の研究者を望んでいるのか、それについて、少し参考資料を「平成14年度・民間企業の研究活動に関する調査報告」(文部科学省)より示していきたいと思います。

はじめに、研究分野を次の表1のように分類させていただきます。

ライフサイエンス分野生物、バイオテクノロジー、食料、保健等
情報通信分野情報、通信システム、電気、電子、コンピューター等
環境分野環境計測、環境対策、生態、リサイクル、気象、地球物理等
ナノテクノロジー・材料分野金属材料、無機材料、有機材料、微細加工、計測、プロセス等
エネルギー分野既存エネルギー、原子力、貯蔵、輸送、新エネルギー、省エネ等
製造技術分野機械、加工、品質管理、マイクロマシン、ロボット等
社会基盤分野土木、建設、輸送機器、淡水化、危機管理、防災等
フロンティア分野宇宙開発、海洋開発等
その他自然科学分野
人文科学分野哲学、文学、教育、歴史、言語等
社会科学分野政治、経済、法律、経営等
その他

表1:専門分野の分類


みなさんの専門分野はどれになるでしょうか?私の場合は強いて分類するのなら「フロンティア分野」に入るのかなと考えています。

アンケートでは、企業に対して、上記の分野のうちのどの分野の研究者が不足しているのかを聞いています。以下の図に研究分野ごとの業界ごとの研究者の不足状況を示します。この図は、各業界ごとに研究者が不足と答えた企業の数を回答企業数で割った割合で示しています。各業界の回答企業数は、一番最後に示します。

図1 業種別の研究分野ごとの研究者が不足とこたえた企業の割合

平成14年度・民間企業の研究活動に関する調査報告




図1が、業種ごとに研究分野ごとの研究者の不足と答えた企業の割合を示したものです。人文科学分野、社会科学分野に関しては、不足と答えた企業がある場合でも、せいぜい1社か2社という状況であったので、省きました。この調査自体が、どちらかというと、技術に関するものであったために、そのような方向にアンケートの送付先が偏っていたというのもあるのかもしれません。

図1は、業種によって、アンケートに回答している企業数がことなりますし、会社の規模も違うと思われるので、一概に比較はできないとは思うのですが、なんとなく、どの業種がどの研究分野の研究者をより求めているのかということはわかるのではないかと思います。

たとえば、ライフサイエンスの場合は、医薬品工業や食品工業で割合が高くなっているのはなんとなく理解できることなのですが、精密機械の業種でも、結構高い割合を示していることがわかります。また、情報通信分野の場合だと、機械、電気、自動車関係などで、すべて、大きな割合を示していることがわかります。そして製造技術分野の場合は、自動車や機械、精密機械関係で大きな割合を示しているのは理解しやすいことのように感じられますが、実際は、化学関係の分野でも、結構な需要があるということがわかります。フロンティア分野に関しては、ほとんど需要がないように感じられますが、これは、その専門、そのままでは必要ないということであると思います。たとえ、フロンティア分野といえど、ベースになっている事柄は、材料分野であったり、情報通信分野に入るような事柄であったりというように、多分どこかの分野にかぶる事柄であると思われるので、それほど、フロンティア分野にこだわらず、職業選択をしていったら大丈夫なのではないかと思います。

いま、自分の就職先がないと考えられている方もいるかもしれません。しかし、よく考えてみてほしいのです。ただ単に自分の可能性に気付いていないだけなのかもしれません。もしくは、自分を必要としてくれている場所を探せだせずにいるだけなのかもしれません。決して、自分自身の過去と現在、そして未来を台無しにしないようにしてください。




平成14年度・民間企業の研究活動に関する調査報告における業種別の回答企業数

業種回答企業数業種回答企業数
全体1061製造業計825
食品工業78繊維工業25
パルプ・紙工業11印刷業4
医薬品工業53総合化学・化学繊維工業32
油脂・塗料工業17その他の化学工業62
石油製品・石炭製品工業16プラスチック製品工業23
ゴム製品工業9窯業29
鉄鋼業36非鉄金属工業36
金属製品工業39機械工業99
電子応用・電気計測機器工業56その他電気機械器具工業25
情報通信機械器具工業34電子部品・デバイス工業28
自動車工業54自動車以外の運送用機械工業19
精密機械工業20その他の工業20
非製造業計236農林水産業8
鉱業5建設業119
電気・ガス・熱供給・水道業15ソフトウェア・情報処理業18
通信業8放送業4
新聞・出版・その他の情報通信業1運輸業11
卸売・小売業13金融・保険業3
不動産業3飲食店・宿泊業0
学術・開発研究機関6それ以外のサービス業14
その他の業種8
資本金規模別
10億円以上50億円未満48650億円以上100億円未満201
100億円以上500億円未満274500億円以上96
その他4



一つ前に戻る
次へ
もどる