第23回:博士じゃ駄目ですか?


企業は博士を採らないということはよく言われています。そういう場合もあるでしょうし、そうでない場合もあると思います。少なくても僕の場合は、博士は採らないと人事の人に言われた経験はありません。面白かったのは、商社に面接に行ったときに、エントリーシートの経歴の欄に博士まで書けるマスが準備されていなかったので、大学院に5年間在学していることにしたら、面接官に「どうして大学院に5年間も行っているのか」と最終面接のときに開口一番に言われたことですかね。どうも博士が受けに来ることを全く考慮に入れていなかったようです。

実際のところ、企業は、博士の採用について、どのような態度で臨んでいるのでしょうか?本当に博士を採らないという会社ばかりなのでしょうか?平成14年度の「民間企業の研究活動に関する調査報告」に、新卒で採用する研究者の選考方法という項目がありますので、それを示そうと思います。

図1 新卒等で採用する研究者の採用方法


この図で回答している企業数は、1061社です。その内訳は、資本金での内訳で示すと、500億円以上の会社96社、100億円以上500億円未満274社、50億円以上100億円未満201社、10億円以上50億円未満486社です。また、製造業、非製造業の別では、製造業が825社、非製造業が236社になっています。資本金の別でいうと、だいたい大企業と中堅企業が半々ずつという感じでしょうか?

それで、図1を見ていただきたいのですが、この図は、学生を採用するときに、学歴ごとにどのような区分を設けているかを調べたものです。学歴別に区別している会社が18.9%ありますが、そういう会社の場合は、本当に博士の採用枠を設けているところもまるでしょうし、設けていないところもあるだろうと思います。実際に、そういう学歴別に採用枠を設けているところはどの程度、博士を採用しているのでしょうか?次に実際に平成15年度採用予定で内定を出した学生の採用方法別の人数の内訳を示します。

図2 新卒等で採用する研究者の予定数


この図は、新卒で学生を雇用するときに学士と修士と博士をどのように区別しているのか、そして区別しているとき、その中でそれぞれの区分ごとにどれだけの学生を採用しているのかを示しています。ここで示しているのは、100社あたりの人数で、全体で1123.8人/100社となっています。そして、図2で注目してほしいのは、「学士、修士、博士を区別」という分類ものなのですが、その区分の学士の人数が35.5人、修士の人数が65人(「修士」とのみ記されているもの)、博士の人数が3.3人となっています。たとえば平成14年度の新卒の博士は、理学で約1600人、工学で3100人、農学で1000人となっています。理系で合計5700人となります。それに対して同年度の新卒修士の卒業生のうち就職した人間の数は、理学で3600人、工学で24000人、農学で2200人となります。工学系の人数が圧倒的に大きいのですが、合計でだいたい30000人程度です。平成14年度の理工系の卒業生に関して、修士の卒業生に 対しての博士の比率は2割程度になります。この数字を頭に入れた上で、先ほど示した修士の採用人数に対する博士の採用人数を見てください。博士の数は5%程度となっていることがわかります。これがあらかじめ定められていた採用計画なのか、結果的にこうなってしまったのかはわかりませんが、博士課程の学生が就職が厳しいというのはある意味あたっているのかもしれません。

しかし、希望がもてるとすると、図1で、約65%もの会社が、「学士・修士・博士の区別なく予定数を設けている」と答えていることです。また、実際の採用においても、結果はどうあれ、図2に示されているように「学士・修士・博士の区別なく採用」と答えている会社が8割近くになっています。多くの企業は「博士は使い物にならない」と頭ごなしに考えているわけではなく、何か自分たちの希望に合致する人間がおれば採りたいと考えているようです。では、企業が博士に求めているものっていったいなんなのでしょうか?専門?経験?気になるところです。

私が就職活動中に、大学に来たリクルータの方に聞いた話で印象に残っているものがあります。その会社は某科学会社の子会社で半導体の回路設計をしている会社だったのですが、博士の方に対しては、実務経験は求めないが、自分の会社に修士で入社した人間の3年目に相当する程度の洞察力と仕事を自分で組み立てて進めていける力をもっていてほしいということでした。また、別の会社においては、リクルータが事前の案内メールで、博士課程の学生さんもよかったら会いに来てくださいなどとうれしいことを言ってくれ、いそいそと会いに行ってステーキをご馳走になってきたこともありました。この会社のように博士に対してなんらかの期待をいだいている会社もあるようです。

次回は、企業は博士に何を求めているのかを調べていきたいと思います。



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