第20回:新規採用教員の分野別の採用前の状況


前回は、助手への採用は、「その他」からが多い、つまり研究生・ポスドク経験者などからの採用が多いということを示しました。今回は、分野ごとの新規採用状況を見ていきたいと思います。分野ごとの特徴というものはあるのでしょうか?早速、図1に平成13年度の新規採用教員の分野別の採用前の状況を記します。

図1 新規採用教員の分野別の採用前の状況(H13)


保健関係の採用者数が圧倒的に大きいので、以下に図2として、保健関係の採用を採用状況を除いた図も示します。

図2 新規採用教員の分野別の採用前の状況(H13)(保健関係を除いたもの)


平成4年、平成10年における傾向もほぼ同じような感じなので、平成13年度のもので考察をおこないます。もっとも顕著な特徴は、保健分野の採用が圧倒的に多いということです。保健分野で採用が5100人あったのですが、これは、次に多い工学分野での採用数1279名の4倍くらいにもなっています。平成13年度における教官数は、保健分野で46,000人、工学分野で26,000人となっています。保健分野の教官数は、工学分野の約1.8倍になっています。ひょっとすると保健分野の離職者数が多いということなのかもしれませんが、手元にまだそのデータを所持しておりませんので、なんともいえないです。ちなみに、平成13年度の工学分野の学部学生数は456,000人、保健分野の学部学生数は、157,000人となっており、学生一人当たりの教官の数は保健分野でかなり多いことになります。

前回示した助手の採用状況と同じように、分野ごとで見た場合でも、「その他」からの登用が極めて多く、新卒からの登用が少ないことがわかります。特に人文科学においてその傾向は顕著であり、理学、教育、芸術においても、「その他」からの登用の傾向が極めて高い傾向があることがわかります。人文科学の場合、新卒からの採用は、126人であるのに対して「その他」からの登用が755人となっています。また官庁、民間企業、自営業等職業人からの登用が少ないのも特徴になっています。職業として人文科学の知識を生かす場が少ないということもあり、いったん、大学教官以外の道を進んだ人間はもう大学には戻ってこられないのかもしれません(大学に関しての暴露本のようなものを読むと特に人文系や社会科学系のような文系分野において、大学のポストの斡旋についての”麗しい”師弟関係のようなものがあるらしいですが・・・・)。また、教育分野においては、当然といえば当然なのかもしれませんが、実際に教育に携わっている高校教師などからの登用も多いのが特徴になっています。

ポストが得られるまでは、ポスドクや研究生、非常勤講師などで生計を立てていくことになると思います。ポスドクはまだ研究をおこなうことによって生計をたてていけるし、それなりに業績もあげていくこともできると思うので、まだ恵まれているのではないかと思います。しかし、非常勤講師などになってしまったら、日々の糧を得るための活動に時間と労力を割かれてしまい、研究どころではなくなってしまうのではないでしょうか?そうなってしまったら、果たして各自の望んでいた分野で研究者になろうと思っていた目標はいったいどうなってしまうのでしょうか?このようなどうしようもない状況に陥ってしまったとき、果たして自分がなろうとしている大学の教官という立場が若い時代の貴重な時間を台無しにしてまで手に入れなければならないものなのか(もしくは人生をかけてまでして手に入れなければならないものなのか)よく考えてほしいと思います。そしてその結論を出すのは早いほどよいのではないかと思います。もしも、理工系であれば、企業で研究開発に関ることも可能でしょう。人文系に関しても、できたら自分の専門に関れたらよいかもしれませんが、それがかなわなくてもたとえば昼間は企業などで正規職員として働きながら週末や終業後は研究者になるということも可能なのではないかと思います。企業としても教養の深い人間が組織に入っているというのは、よい刺激になるのではないかと思います。

決して、ご自分の人生を浪費なされませぬようお願いいたします。



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