第15回:保健分野(医学・薬学系)の就職状況およびまとめ


医学・薬学系(ほとんどが医学か歯科医学で、薬学は少数になりますが・・・)の状況は、これまで、述べてきた分野と比較して、かなり異なる状況にあります。これは、これらの分野、特に医学系の就職に関しての特殊な事情によるところもあるでしょうし、第一に、医師なり歯科医師なり、その資格をもっていないとなれないという強みもあるのだろうとは思います。前口上はこの辺にしておいて、とりあえずは、修了者数の推移を見てみましょう。

図1 保健分野の博士課程修了者のうち就職者の人数


保健分野では、もともとかなりの数の博士が輩出されています。純粋に研究をおこなうために、博士に進んでいる人も多いでしょうが、医学分野では、博士号をとることが一種のステータスになっているということも聞いたことがあります。それから、就職者の割合も驚異的に多いです。平成14年度でも7割5分が卒業時に就職先を確保しています。ひょっとしたら医局とかなんらかの就職斡旋システムのようなものがあるのかもしれません。医学分野の修了者数はもともと全体に占める割合が高いですし、就職率も高いですし、おそらく異なる就職システムを有する であろうと思われますし、現在、深刻化ししている博士やポスドクの就職問題を考えるときに、実態以上に就職率などを高いものにしてしまっている面もあるように思われます。ただ、保健分野でも、おそらく結構な数の医師免許をもたない研究をおこなうために進学してきた博士の方というのも存在すると思われますので、そのような方々については別途、理学や農学、人文科学や社会科学、工学などの分野と同様に扱って考えていかないといけないことなのではないかと思われます。

それでは、次に年度ごとの就職者の進路を示してみたいと思います。

図2 保健分野の博士課程修了者のうち就職者の職業別内訳


上に示した図のように、保健分野では、ほとんどが医師や薬剤師として就職していっているのがわかります。博士の増加に対しては医師の増加によって対処をしている様子がわかります。

第10回から第15回にわたって、それぞれの分野ごとの修了者に対する就職者の割合、就職者の進路の内訳を示してきました。そして、それぞれの分野ごとに特徴が顕著な特徴があることがわかりました。

人文科学系に関しては、大学教官以外の進路を模索することが早急に必要であることがわかってきたと思います。社会科学系に関しては、大学教官以外の道も少しずつ開拓はされてきているかもしれませんが、まだまだ足りてはいないようです。工学系においては、このごろは産学連携なんかがさかんにおこなわれていますが、おそらく社会科学系に関してもこのような試みは可能ではないかと思います。社会科学系は、名前に「社会」と入るくらいなのですから、社会との接点を密にもつことは人文系と比べれば楽なのではないかと思いますがどうでしょう。産学連携などの試みを通して、実業の世界に博士を送りこんでいくということも大学がバックアップしておこなってみてもよいのではないかと思います。

理学系、農学系に関しては、就職者の増加を科学研究者の伸びによって支えている面があるようです。つまり、ポスドク一万人支援計画の恩恵を一番にこうむっているということかもしれません。その代わり、現在問題が顕在化しつつある、ポストポスドク問題のあおりをもっとも受ける分野であるともいえます。これらの分野に関しても、大学教官・ポスドク以外の分野への模索が必要と思われます。それに対して工学系では、就職率の減少傾向はありますが、就職者の増加を理工農技術者、すなわち企業研究者・技術者への選択という形で吸収していっています。理学・農学において、産業界への就職が伸び悩むのは産業界とのパイプが薄いのかもしれないなということは感じます。工学系においては、博士の企業への就職というのは、だいたい所属の研究室と懇意にしている会社との親密な関係が在学中から築かれ、そういったつながりから就職をしていくというケースが一般的なようです。博士課程の学生の就職を考える場合、産学連携というのが解決のひとつを与えるのかもしれないなとは思います。

保健分野に関しては、就職の優等生ということができるかもしれません。学部卒の就職率さえ55%というこのご時世において、7割を超える就職率を保持しているのは驚異的とさえいえます。これは、彼らの大半が医師免許という得がたい資格をもっているということもあるでしょうし、おそらくは就職の斡旋システムが存在しているためであろうと思われます。以前、「別冊宝島」(どのような題名のものかは忘れましたが、大学の医学部のことを扱ったものでした)を読んだときに、医者は医局の周りをぐるぐると行き来して一生を終えるなどという記述を見たことがあります。このループから外れると完全に干されるらしいということも聞いたことがありますが、なんにしても食っていくことができるというのはすばらしいことだとは思います。大学と病院の関係を大学と産業界もしくは教育界などに適応するということは多分事情が大きくことなると思うので、無理だと思いますが、参考になることもあるいはあるのかなと思います。

このごろは、博士課程修了後というよりは、博士課程の現状についての記述が増えております。しかし、現状を把握しておかないとなかなかうまく次の展開に進めていくことができないので、しばらくお付き合いしてください。


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