第9回:博士の受け入れ先


少し前に博士の就職率について触れました。そのときに博士の就職率は下がってはいるが、年間の卒業者数がこの10年間の間に2倍以上に増えた割には、全体としては就職率は低下しておらず、一体どこに吸収されているのであろうという話をしました。今回からしばらく、博士課程を修了された方々は、一体どのようなところに吸収されていっているのか調べていきたいと思います。はじめに、再確認の意味を含めて、年度ごとの卒業者のうちの就職者の人数を示しておきたいと思います。例によって、学校基本調査報告書(H3-H14)から整理したデータを示します。

図1 博士課程修了者のうちの就職者人数


ちなみに、「その他」というのは研究生とか専門学校生になったもの、不詳のものを指しているようです。では、図1で示した就職者たちは、果たしてどこに吸収されていったのか、図2に受け入れ先を示します。

図2 博士課程修了者のうち就職者の進路別人数


以下、このグラフについて考察をしていきますが、はじめに、このグラフの職業の分類について、簡単に説明しておきたいと思います。以下にグラフにまとめてみました。

区分
その他教員幼稚園、小学校、中学校、高等学校、高等専門学校、短期大学、養護学校などの教員および専門学校、予備校・塾などの講師
大学教員大学・大学院の教官
科学研究者研究所・試験所・研究室において、自然科学・人文科学・社会科学の研究に従事するもの。国公立の研究機関の研究員、およびポスドクがこれにあたると思われます。
理工農技術者科学的・専門的知識を生産に応用する仕事に従事するもの。主に企業の研究者にあてはまると思われる。
その他技術者栄養士、芸術家(画家・カメラマンなど)、あと、司法関係者、公認会計士、税理士、宗教家、小説家、翻訳家、記者、アナウンサー、編集者、保育士、スポーツ選手、通訳、カウンセラーなどが含まれる。
医師・薬剤師医師、歯科医師、獣医師、薬剤師
その他○管理的職業従事者(自治体・会社の運営に直接かかわるもの、たとえば、自治体の課長以上の役職のもの、もしくは会社・団体の役員、経営者。)
○事務従事者(課長以上の職務にあるものの監督を受けて、庶務・人事・会計・調査・企画などの仕事、運輸・通信・生産関連・営業販売・外勤に関する事務、および事務機器の操作を担当するものをいう。司法修習生はこの部類にはいる。)
○販売従事者(有体的商品、不動産、有価証券などの売買、保険の代理・募集の仕事、などに従事するもの。小売・卸売り店主、販売員、外交員を指す。)
○サービス職業従事者(家事介護サービス、調理・接客・娯楽など個人に対するサービスに従事するもの。旅館の主人・支配人、理容師、クリーニング店、下宿の管理人、スチュワーデスなど。)
○保安職業従事者(国家の防衛、社会・個人・財産の保護、法と秩序の維持などに従事するもの。自衛官、警官、消防員、ガードマンなどを指す。)
○農林漁業作業者
○運輸・通信従事者(機関車・自動車・船舶・航空機・電車の運転に従事するもの。)
○生産工程・労務従事者(工員、土木作業員など)

と、以上のように分類をしております。

平成3年度から、平成14年度の間に、就職者全体の増加率は、1.87倍であり、これは、卒業者全体の伸び2.2倍に比べて小さい伸びにとどまっております。それぞれの分野の就職者の増加率は、次のようになります。大学教員の伸びは1.2倍、科学研究者の伸びは3.63倍、理工農技術者の伸びは2.56倍、医師・薬剤師の伸びは1.53倍となっております。また絶対的な数は少ないのですが、その他の伸びが4.14倍と極めて大きな伸びを示しています。このグラフを見てまっさきに気付くのは、大学教員になれる人間が卒業者の数の増加に比例しては増えていないということです。そしてこれを埋め合わせるかのように科学研究者すなわちポスドクが増えていっているということです。ちなみにグラフを見ると、平成8年と平成11年に科学研究者の伸びが前年度に比べて極めて大きな幅で伸びているのがわかると思います。平成8年度は、ポスドク1万人支援計画が始まった年であり、平成11年度は確か、ポスドクが1万人を超えた年であったと思われます。

次に、各年度におけるそれぞれの職業別の割合を示してみたいと思います。

図3 博士課程修了者のうち就職者の職業別の割合


この図を見ていただくと、大学教員の全体に占める割合はどんどん減ってきているのがわかると思います。そして、その減少を埋め合わせるように科学研究者の割合と理工農技術者の割合が増えていっているのがわかると思います。大学教員と科学研究者、理工農技術者を足し合わせたとき、その全体に占める割合は年度によらずほとんどかわらないということがわかります。科学研究者の数の増加は恐らくはポスドク支援計画などの人為的なものに依存するところが大きいと思われますが、理工農技術者の増加や微弱ながらその他の増加というのは、博士が徐々にではあるにしても大学の外に出て行き始めている証なのかなとも感じます。今後は、学問分野毎の特性についても見ていきたいと思っています。ご期待ください。



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