希望する研究職を目指して

名前:Kさん 

「大学院生・若手研究者のための部屋」管理者

http://daigaken.web.infoseek.co.jp/

所属:アウトソーシング会社 


はじめまして。地方国立大学化学科の修士を修了し、周りと同じように、普通に化学会社に就職しました。一応、研究職として会社に入ったのですが、希望していた基礎研究所ではなく、応用研究所に配属されてしまいました。私が入社前に想像していた仕事内容と実際の仕事内容には大きなギャップがありました(基礎研究所では新しい農・医薬を研究開発する事が仕事ですが、応用研究所では自社や他社で開発された農・医薬を工場で製造するための合成法を開発する事が仕事です)。初めは応用研究所での仕事にかなり戸惑いましたが、しばらくやっているとこれはこれで面白いし、やりがいも出てきました。今でも、この時は非常に貴重な経験ができたと思っています。ただ、現場と連結して仕事をしている関係上、三交替勤務なども多くて体力的にきつかったですし、やはり、どうしても、新しい農・医薬の研究開発を仕事にしたいという気持ちは捨てがたいものがありました。そこで、博士号を取得すれば、そのような仕事に就けるのではないかと思い、博士課程への進学を考え始めました。初めは会社に所属しながら博士課程に行こうと思っていたのですが、応用研究所では業務内容と博士論文の研究テーマを一致させることが難しく、また会社から許可がおりませんでしたので、やむなく会社を辞めることにしました。こうして、4年間勤めた会社を辞めて大学院博士課程に進学することにしました。博士課程在学中がどのような感じであったかは、自分のホームページ(http://daigaken.web.infoseek.co.jp/)にのせてありますので詳細は省略しますが、とにかく頑張って研究して結果を出すことだけを考えていました。それさえできれば、自ずと道は開けると信じていたのです。幸い、頑張った結果、かなり結果も出て、D2が終わる頃までに5本の研究論文を、まずまずの学術雑誌に載せる目処もつきました。私の場合、よい指導教官に恵まれなかったため、テーマ設定から論文作成までほとんど自力で行ったのですが、そんな状態でも結果を出せたので大きな自信を持つことができました。そのため、だんだんと、博士号習得後は自由に研究できる大学や国研でやっていきたくなりました。そこで、D3からアカデミックへの就職を検討したのですが、無名研究室所属の悲しさか、全くどこからも相手にされなかったです。そこで、もっとキャリアを積めば、何とかなるかもしれないと思い、米国へのポスドク留学を考え始めました。といっても、当時所属していた研究室は全くお粗末で、学生、卒業生はおろか、教官でさえ米国留学の経験がなく、何をどうしていいかわからない状態でした。そこで、わらをもすがる気持ちでITEの化学英語の講習会に(自費で)参加しました。そこで運良く、講師の人から指導を受ける機会に恵まれ、何とか米国へのポスドク留学が実現できました(詳細は自分のホームページにのせてあります)。

異国の地で、博士課程とは違う研究テーマでやっていくのは不安もありましたが、ここでもとにかく頑張って結果を出せば何とかなるだろうと思っていました。幸い、徐々に実験データも出てきて、数年で幾つか論文を出すことができました。

日本と米国でこれだけ結果を出したのだから道も開けるだろうと思って、日本での就職活動を始めたのですが、何度応募しても、相変わらず、アカデミックからは全く相手にされませんでした。(どの大学も何の理由もなく不採用で、唯一、ある研究所が「実績は認めるけれど、現在は研究テーマが変わったため」だと教えてくれました)。自分の実力に自信を持っていただけに、この結果にはさすがにがっかりして、やる気を失ってしまいました。こうして、アカデミックへの関心はうすくなっていき、民間企業を検討することにしました。年齢的な問題もあり、こちらもそう簡単には決まらなかったため、とりあえず、人材派遣会社の紹介である企業で派遣社員をやることにしました。しかし、ここは想像以上に研究環境がひどく、派遣後に正社員との要望がありましたが、3ヶ月で辞めることにしました。人材派遣会社からの紹介を受ける場合は、事前によく条件などを確かめておいた方がよいと思います。その後、あるアウトソーシング会社から誘いがあって、現在勤務しています。アウトソーシングも他の企業などで勤務するため、派遣社員と似ていますが、幾つか違いがあります。最も大きな違いは、派遣は派遣会社の社員ではないのに対し、アウトソーシングはアウトソーシング会社の社員だということです。そのため以下のような違いがあります。派遣は時給制なのに対し、アウトソーシングは主に月給制です。派遣にはボーナスはありませんが、アウトソーシングにはあります。さらに、派遣には住宅手当・通勤手当はつきませんが、アウトソーシングにはつきます。こうしてみると、いいことずくめのようですが、デメリットもあります。派遣の場合、派遣期間終了後に派遣先企業の正社員になるという可能性もありますが、アウトソーシングの場合はそのような事は少なく、一般に、派遣期間終了後はまた別の派遣先へ向かうことになります。また、メーカーの研究職と比較すると、研修を受ける機会や研究ミーティングに参加する機会は少なく、外部の学会・講習への参加も困難です。したがって、実務経験者や自ら積極的に勉強しようという強い意志のある人ならともかく、それ以外の人にアウトソーシング会社はあまりお勧めできません。

この約10年の間に経験してきたことを述べました。この経験より、アカデミックは個人の努力や実力だけではどうにもならない世界である事を実感しました。しかしながら、民間なら、頑張って結果を出せば必ず道は開けるという事もよくわかりました(実際に、現在の会社以外にも、幾つかの会社から誘われたことがあります。アカデミックからは相変わらず相手にされませんが)。結局、アカデミックポジションには就けなかったものの、博士課程時代と米国ポスドク時代はとてもよい経験となり、自分に大きな自信をもたらせてくれました。大学院生・ポスドクの方は、不安を感じることもあると思いますが、とにかく努力して結果を出し、書類選考や面接で自分を売り込む事ができれば、アカデミックは無理でも、必ずどこかに就職先はあるということを強調して終わりにします。



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