専門性という罠


博士課程となると、どうしても自分の専門性を気にしてしまいます。企業の方でも博士の学生の専門性を気にしていることは、以前、私がとある電機メーカに博士の採用について問い合わせをしたときの以下の返信メールを見てもおわかりかと思います。

---------------------------------------------

この度はお問い合わせをいただき、ありがとうございました。 博士後期課程修了見込みの方の応募につきましては、その高い専門性を 活かして働いていただくため、配属部門を想定した選考を進めさせていただきます。

以下の書類を下記宛先まで郵送にてご提出下さい。

  1. 履歴書(フォーマットは市販のもので結構です。)
  2. ご本人の専門性が判断できるもの(学会論文など)
  3. その専門性を活かして○○○で何をやりたいかについて(A4一枚程度)

応募頂いた書類をもとに、社内の関連する部門にて書類選考を行います。 書類選考合格の場合、その部門に配属されることを前提に、面接を実施し合否を決定 します。

-----------------------------------------------

こんなメールを見せられてしまったら、もうこの会社を受けるのをやめておこうかなと私のように特殊分野の人間は考えてしまいます。でも、少し待てよと自分の就職活動を振り返って考えました。博士課程の学生(特に理学とか工学分野でも実用とは程遠い研究をしている人たち)が就職を得るために最低限必要な事柄があるなと気づきました。「企業就職を目指すなら、自分の専門は捨ててください」ということです。

書類選考で提出する研究概要で、自分の研究について、事細かに書いたら、「核」という言葉で、ぜんぜんその会社と関係ないことをやっていると思われて落とされたということもありました。しかし、はじめに面接をやってくれるような会社だったら、現在、自分のやっている研究に対して未練のない旨をきちんと伝えられたら、あまり狭い意味での専門性にこだわらずに、もう少し視野を広くして選考をしてくれたような気がします。つまり私の場合だと、「核融合」という分野の人間として見られるのではなくて、「プラズマ屋」というもう少し広いカテゴリーで分類してもらえていたような気がします。

企業が、博士の専門性にこだわるのは、一説には博士課程の学生に対してのやさしさであるとも言われています。修士卒の人と比べたら、余計に3年間も時間を費やしているのだから、専門から離してしまったらかわいそうだろうという感じです。

基本的に、博士課程に進む人というのは社会性はともかくとして勉強好き、研究好きの方々ではないかと思います。企業としては、そういう方々が、自分の狭い専門にこだわらず、なんでもやりますよという姿勢を示してくれたら、博士の学生がそれまでに培ってきた問題解決のプロセス(こう書いてみて、自分にそんなプロセスがあるのか不安になってきましたが)を柔軟に発揮してもらえると歓迎するのではないかと思います。

ちなみに、事務系の職種に鞍替えしようと考えている方もいるかもしれませんが、事務系の職種であれば、採用担当者は、専門性を評価することができないし、はじめから研究について細かく書くことも求められていないので(エントリーシートに修士課程までしか書く欄を準備してくれていない場合がほとんどですし)、基本的に何かその分野に関してのすごい専門性をもっているという前提で話を進めてくれるので、人物評価だけで採用・不採用が決まるような感じがします。

もうすぐ就職活動のシーズンになります。来春のための募集はそろそろ終わりかけのような雰囲気です。10月からは2005年春採用予定の人たちのための活動がはじまると思います。ぼちぼち、集団企業説明会なども開かれると思いますし、早い業界は10月くらいから採用活動をはじめます(コンサルタントとか)。もしも、少しでも、企業就職に興味があったら、ぜひ、一度は集団企業説明会などに顔を出してほしいと思います。自分で自分の専門を狭めるのは損ですよ。