「めざせ!イノベート・ニッポン」

松田 岩夫(まつだ いわお)著  科学新聞社 1500円+税 2006年12月20日初版発行


「21世紀の国富論」

原 丈人(はら じょうじ)著  平凡社 1400円+税 2007年6月20日初版発行


一冊目の「めざせ!イノベート・ニッポン」の著者は、前・科学技術政策担当大臣です。彼の講演を二度ほど聴講したことがあるのですが、その講演内容とは裏腹に、話し方にはびっくりさせられる人でした。最近の政府の科学技術の扱い方について、少なくても、著者が前・科学技術政策担当大臣であったときに、どのように今後の研究開発のあり方を考えようとしていたのかを知ることはできるだろうと思います。

イノベーションを誘起するために、第3期科学技術基本計画に基づく施策を中心として、どのような社会制度を整えていく必要があるのかについてざっくりと述べられており、これからそれぞれについて知見を深めていきたいと考えている人にとっては参考になるのではないかと思います。

ただ、いくら制度を整えたとしても、それが目指す方向に動くかどうか(この場合だと、研究成果がイノベーションに結びつくことになるのでしょうか)は、その制度上で動く人たちがその意図の通りに動くかどうかということだろうと思います。

本の中でも何度もでてきますが、さまざまな競争的研究資金が交付されているが、それを大学などの研究者が将来の社会にとって必要となるかもしれない何かを生み出すために使ってくれているのか、ただの自己満足のために使っていないかということが懸念されております。

競争的研究資金の中には、科研費のように研究者の自発的なアイデアをはぐくみ、それが将来的に社会のために有益な何かの種を生み出すことを期待するものもあれば、政策的なある特定の目的のために配られるものもありますが、いずれもがなんらかの形で長期的に見たときに研究成果が社会に還元されることを期待されているものであります。果たして、どれだけの人たちが、そういった意図を真摯に汲み取って研究をおこなっているのだろうかと考えてしまいます。

その他のことはよくはわかりませんが、昨今の科学技術関係の施策に関しては、さまざまな不備はあるにしても(事務をさばく熟練した有能な事務員が慢性的に足りないとか)、影響や恩恵をうける人たちが政策担当者の意図を汲んでよく学習し善意の元に行動するのであれば割りとうまく回るはずの事柄も多いのではなかろうかとも感じます。

二冊目の本は、アメリカでベンチャーキャピタルのようなことをやっている人が書いている本です。最近のアメリカにおける市場万能主義がいかに技術開発を蝕んできているのかという話や、そのような流れの中でアメリカのベンチャーキャピタルも、リスクをとらない方向に流れつつあり、社会を大きく変革するほどの大きなイノベーションがおきなくなってきてしまっているということが述べられて後で、今後、大きな変化をおこしていくためには、社会制度であったり、会社のありかたであったりはどのようにあるべきなのだろうかという私見が述べられていきます。私個人でできることは恐らくとても小さいと思うのですが、企業人としてであれば割りとたいしたこともできるかもしれないなと感じさせる一冊でした。

二冊の本を読んでみて、結局は人の問題になるのだろうなということを感じております。



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