「徹底検証・大学法人化」

中井 浩一(なかい こういち)著  中央公論新社 840円+税 2004年9月10日初版発行

「大学改革・課題と争点」

青木昌彦、澤昭裕、大東道郎+「通産研究レビュー」編集委員会 編  東洋経済新報社 3800円+税 2001年2月22日初版発行

「競争に勝つ大学」

澤昭裕、寺澤達也、井上悟志 編著  東洋経済新報社 3200円+税 2005年2月24日初版発行


今回は3冊の本を紹介させていただきます。大学教員も、大学院生やポスドクも一連の大学改革の流れに巻き込まれているわけですが、上記の著作を読むことで、大学法人化の背景で行われていたこと、大学法人化がどのような方向を目指すことを意図しているのかということの概要を知ることができるのではないかと思います。

まず、「徹底検証・大学法人化」ですが、あとの述べる二冊に比べると良心的にまとめられている本ではないかと思います。大学法人化の前夜として、新しい大学システムとしての筑波大学の挑戦と挫折、97年の行政改革の流れの中での東大医学部病院の独立行政法人化をめぐる話題、そして、文科省と国立大学の関係の関して概説したあとで、国立大学法人化をめぐる話題に移っていきます。文科省と経産省の間の駆け引きや、旧帝大と地方の国立大学の確執などなど、さまざまな利害関係者がどのように動いたのかということはわかると思います。

「徹底検証・大学法人化」を読むと、国立大学法人化は、文科省が経産省に押し負かされるような形で実現したように書かれてあります。押し負かすときのベースとなったのが、二点目に挙げた「大学改革・課題と論点」という本のようです。3部構成で、全17章からなっている本なのですが、それぞれの章をその分野の専門家や官僚が執筆しています。専門家の書いている論文の中には、読んでいて興味深いものもありますし、3部の構成も産業の発展ということに偏っているということが大学の多面的な要素を切り捨てているようで気になりますが、第一部「高等教育・研究システムと産業発展の相互作用」、第二部「産業人材供給システムと大学改革」、第三部「イノベーションを生み出す社会システム構築と大学改革」となっており、論点自体は、大学と産業のかかわりのみに注目をするのであれば、それほど間違ってはいないのかなとは思います。

ただ、こういった複数の著者による本にはよくあることなのですが、本全体として何を主張したいのかよくわからないということと、結局、最後には、編者の一人が工業技術院の独立行政法人化に取り組んだときの例(競争の重視)を国立大学にも適用すべきだということで終わっているあたりがなんだかなとは思わされます。

競争を重視するということは、彼等の続編にあたる「競争に勝つ大学」においてより顕著になるのですが、彼等の中ではどうもアメリカの大学システムや研究システムが念頭にあるようで、書中において、アメリカのシステムをそのまま真似るのは駄目だがということは述べられておりますが、実際のところはそのまま真似ていきたいということが伝わってきます。アメリカのシステムなどについては、書物などで読むことはありますが、そのシステムが成立するための文化的な基盤というのがあるのではないかと思います。そういったことが検証なされないということはいかがなものだろうかと感じました。

国立大学が法人化されることで、より各大学の自由度が大きくなり、大学人たちもより自由になるはずだったのですが、実際は、自縄自縛に陥っている面も大きいのでしょうが、以前よりも自由になったというわけではないようです(むしろ息苦しくなっているかも)。どうも、経産省の一連の著作を見ていて、例えるとアマゾンをブルドーザーで切り崩して、トウモロコシ畑に変えるような乱暴さを感じてしまいました。

下二つの編者たちのいう「競争」というのは、あたかも企業が製品やサービスでもって、同業他社とシェア拡大のための競争をするといったときの「競争」と同じニュアンスで使っているようで、どうもその言葉を大学や研究機関に対して使うことには違和感と不快感を感じました。

恐らくは、今の大学文化を踏襲しつつ、よりよき方向(大学にかかわっている多くの人が満足できるように)に大学をもっていくことは可能なのではなかろうかと考えております。それを議論するために、もう一冊、「大学改革・課題と論点」があってもよいように感じております。



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