「経営革命の構造」

米倉 誠一郎(よねくら せいいちろう)著  岩波新書 780円+税 1999年11月19日初版発行


この本は、新技術の導入と、それに伴う社会変革、経営システムの変革について、イギリスの産業革命からはじめて、現在のシリコンバレーで起こり、世界に広がろうとしている新しい潮流についてざっと述べている本です。新技術の発明が社会に及ぼす影響について、そして経営システムの変化が技術におよぼす影響について、「技術」と「社会」は、技術をどのように社会に伝えていくのかという「経営システム」を仲介として相互に影響をしあっているということがなんとなくわかることができると思います。ぜひ、研究者や技術者を目指す方々に読んでほしいと思いました。

この本は、5章構成になっています。第1章は「イギリスの産業革命の技術と企業家」という題で、織物工業の機械化の経過と既存業者の反発(ときとして、発明家やそれを支援する企業家は焼き討ちをされたり、殺されたりという過激なものなのですが)、それにもめげず、自分の信念を貫こうとする発明家と彼らを支援する企業家の話です。この章では、織物工業の機械化と動力の変遷(手動→水力→蒸気機関)の歴史をだいたい時系列に話をおっているのですが、読むと、技術が完成するにはそれまでに膨大な知識の蓄積が必要であるということがわかります。決して突然ワットの蒸気機関がでてきたわけではないということです。高校時代に世界史を選択されていた方だと、産業革命の項目で「ケイの飛びひ」とか「ジョニー紡績機」とか「アークライト」という名前とかを覚えさせられたりしましたが、彼らがどのように重要な役割を演じていたかを知ることができる章でもあります。

第2章「アメリカにおける経営革命」、アメリカにおいて、鉄道が敷設されはじめた時期から、広大なアメリカにおいて、鉄道を正確に安全に、そして採算があうように鉄道を走らせる必要性から、「経営管理」が生み出されたことが述べられています。この延長で、鉄道における「経営管理」を鉄鋼業に応用したカーネギー、規模の経済を追い求めたロックフェラーが取り上げられています。そして、第2章をベースにして、第3章「ビッグ・ビジネス組織革新」に進みます。ここでの巨大組織の多角化とそのようなさまざまな事業を内部に包括する組織を運営する上で必要となる管理システムとして「ミドルマネージメント」と「トップマネージメント」が生み出されたことに触れられています。この章では、代表例として、化学メーカー「デュポン」、フォードとGM二つの自動車工業が取り上げられています。

第4章では、鉄鋼生産の再生からはじまる戦後の日本の復興から、オイルショックを経て日本の産業構造の電気機械工業への変化の過程が述べられています。日本の鉄鋼生産の復興が、一人の技術者経営者によって大きく進展したという話は読んでいて面白いです。また、オイルショック後の話で、トヨタの生産方式が取り上げられていますが、この話もなかなか興味深いです。

第5章は、「シリコンバレーモデルの登場」と題して、現在、世界で進む情報革命とそれに伴う、社会に対してのアプローチの変化について述べています。本によると、現在は(特にコンピューター関係)、技術進歩の加速とともに、ニーズの多様化によって、市場にどのような規格を出すかはあらかじめ把握できるものではなく、とりあえず、さまざまな商品・サービスを出してみて、その中で事実上の標準を目指すというものとなっているとのことです。そして、このように「必ず」成功するという保障がなくなったため、従来の資金調達方法では支持できなくなり、そのような中でのベンチャーキャピタルの登場が待たれたいたと述べられています。

ここに書いてあることは、すべての業種にあてはまることではないですし、必ずしも、ここに書いてあることがすべての会社に対してあてはまることではないのですが、一度、目を通しておくとよいかもしれません。



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