「起業家エジソン〜知的財産・システム・市場開発〜

名和 小太郎(なわ こたろう) 朝日新聞社 1400円+税 2001年3月25日初版発行


著者は現在、大学教官ですが、元企業研究者。このエジソン伝は、技術者の視点でまとめてみようという心がけで貫かれており、副題に書いてありますように、「知的財産」「システム」「市場開発」という観点からエジソンが当時の主にアメリカ社会においてどのような位置付けにあったかが記されています。エジソンが生きた時代はちょうど現在と似た状況にあり、多数の発明家がしのぎを削りあっていました。その中でエジソンが活躍した分野として有名なのは、電力システム、蓄音機の分野になります。エジソンには発明家としての顔だけではなく、事業家としての顔もあるのですが、電力システムにおける直流システム(エジソンの事業)と交流システムの熾烈な戦い(当時はまだどちらのシステムがすぐれているかということに甲乙つけがたかった)。蓄音機事業におけるエジソンの消費者ニーズの読み違いなどなど。エジソンとその周辺、同業者たちを描くことによって、さまざまに乱立する新しい技術がさまざまな市場に対する試み、特許紛争を通して一つに収斂していく様が浮き出されています。エジソンは、投資家からはたびたび会社から追い出されたりとにがにがしい思いをしてきており、生涯、投機で稼ぐ人間達を嫌っていたといいます。エジソンの時代の発明家とそれにむらがる投資家、そして現在のベンチャー企業とそれに群がる投資家というのはなんとなく構造が似ている気がしませんか?自己満足の研究で人生を終わらせたくない人には何がしか心に響くことがある本かもしれません。

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