「産学連携〜『中央研究所の時代』を超えて〜

西村 吉雄(にしむら よしお) 日経BP社 1800円+税 2003年3月17日初版発行



著者は東京工大大学院博士課程を終了後、日経マグロウヒル社(現日経BP社)入社、「日経エレクトロニクス」編集長などを経て、2002年東京大学教授(電子工学)を勤めている一風変わった経歴の方です。この本では、まずは企業においての研究開発の意味についてから説きおこしております。まず、企業は利潤をあげつづけるものであると定義します。そして「利潤」とは何かということですが、経済学においては「利潤」というのは、経済学においては「価値体系」と「価値体系」の差異から生み出されるとのことです。この差異とうのは、値段の安いところで仕入れたものを値段の高いところで売れば儲かるといったそういうことです。そして企業においての研究というのは「未来における価値体系」を知るという行為であると定義しております。つまり新技術を使った製品やサービスを市場に送出すと売れるというようなことでしょう。そして企業の役割というのは未来の価値体系であるところの研究成果(論文や特許といったもの)を実際に製品やサービスとして結実させること、つまり「未来の価値体系」と「現在の価値体系」をつなぐことであると言っております。かつて大企業は「中央研究所」を持ち、研究機能をもっており、一つの企業内で、研究→開発→生産→販売とすべての機能を担っておりましたが、著者は半導体産業における顧客との協業、コンピュータ産業におけるハードとソフトの開発の分離の例をあげて、一つの企業内で研究→販売までをすべて担うことができなくなっていき、研究から販売までの各機能が別々に会社なり大学になり、それぞれがネットワークになっていっていっているということを述べております。こうした情勢の中での日本の大学の問題点が指摘されております(共同研究がやりにくいというようは制度的な問題や、博士課程にまつわるよくない循環とか大学人の意識に関する問題などに触れられております。)。読んでおくとなんとなく企業における技術者としての自分の役割とか大学に残る場合なら社会から何が自分に求められているかといったことが漠然と感じることができるかもしれません。

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