「新・大学教授になる方法」

鷲田小弥太(わしだ こやた)ダイヤモンド社 1800円+税 2001年11月29日初版発行


著者は、札幌大学の哲学の教授です。この本に「新」がついているように、10年ほど昔にも、「大学教授になる方法」という本を書いておられるようです。10年で、大学の仕組みも日本の様子も大きく変わり、それに従って、新しく本を書きなおしたということだそうです。著者がこの一連の著書を書かれているのは、大学の教官というのは特別なものではなく、多くの人に大学教官を目指してもらって、大学教官の質を上げたいという気持ちからだそうです。著者ははじめに大学教授になるには頭の良さは必要無いし、なる動機はどのようなものでもかまわないと述べております。しかし、研究が好きでなければならないと述べております。その程度がどのくらいかというと、10年間、研究に専念できる程度とのことです。著者自身は、大学院の博士課程を出たあと、33歳まで、常勤のポストにつけず、非常勤で糊口をしのいだそうです。著者は、大学を卒業してから10年間(大学院に進学する場合は、その期間も含めて)、かけてでも大学教官になる価値があると述べています。大学教授になることの最大の魅力は、「人生をゆっくりじっくり手触り感覚で生きることができことである」とのことです。著者は言います。「私は、大学教師の仕事を選んで、この仕事に熱中しているとき、ふと、自分の魂がふるえることに気付くことがあります。私がハートとソウルをぶち込んで仕事に熱中するとき、身も心も疲労困憊している最終局面で、鐘の音がやってきて、それに私の魂が共鳴するのです。」しかし、こうも言っております。「大学教授というのは、尋常な職業ではない。なるのには最低10年間、研究活動に専心しなければなりません。もちろん自費でです(理系の場合なら、研究生、ポスドクとしてというところでしょうか?(管理人注))。労力も金も必要です。しかも、ポストを得るには、高倍率を突破しなければなりません」大学教官への道は博士課程に進学した学生が思っているとおり、生易しいものではないようです。この本では、第1章「大学教授のおいしい生活」と題して、大学教授の実態を述べ、第2章「大学教授への道」と題して、大学教授になるためになすべきこと(論文を書く、就職口を得るための心得など)が述べられています。そして第3章「大学という就職先」というテーマで、大学を取り巻く環境の変化について述べており、第4章「サラリーマンから教授へ」では、実際に、サラリーマンから大学教官に転職された方との対談が載せてあります。そして第5章「元気のいいアメリカの大学に学べ」では、著者が現地の大学を取材して、すでに飽和状態になっているアメリカの大学業界の現状をリポートして、なぜ、アメリカの大学が活力にあふれているのかをおぼろげながら解き明かそうとしています。題名はなんだろうと思いますが、きわめてまじめな内容です。いま、博士課程やポスドクにいて、大学にポストを求めている人にとっては、あまり読んでも有用な知識は得られないかもしれませんが、大学教育や大学教官について、この本のようにまじめに書かれた本は、大いに励みになるのではないかと思います。

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