「キャリアの常識の嘘」

金井 壽宏(かない としひろ)、高橋 俊介(たかはし しゅんすけ)著  朝日新聞社  1300円+税 2005年12月30日初版発行


著者の二人はどちらもキャリア研究の第一人者の方です。キャリアの積み上げ方についてはいろいろな本が出ていますが、この本を読むと自分の将来を考えることに少し楽な気持ちで取り組めるようになるのではないかと思います。

この本では20項目の質問事項に関して、二人の著者がそれぞれご自身の意見を披露されております。

私自身も、キャリアは計画的に作らないといけないものなのだろうかとか、人生は金ではないという主張や、職種が自分に合っていなければいけないのだろうかといったことで漠然と違和感を感じています。例えば、ある著名な経営者の方は夢に日付を入れて(あらかじめ目標の達成日を決めておく例えば○○年までに出店1000店達成とか))、それが実現することを目指して日々邁進しているとか、そういった話を聞くと、そこまで気張らないといけないのだろうかと考えてしまいます。

この本の中で、高橋さんは、人は次の3種類の動機によって突き動かされると述べております。一つが上昇系動機(影響欲、支配欲、達成欲、競争心、賞賛欲)、人間関係系動機(社交欲、感謝欲、理解欲、主張欲)、プロセス系動機(自己管理力、抽象概念思考、切迫性)の3つです。人にどの動機により強く突き動かされるのか濃淡があるそうです。なので、人それぞれに自分にあったキャリアの積み上げ方があるのだろうと思います。

この本は、キャリアを積み上げる上で必要なのは、自分の人生の方向性はある程度漠然とでももっておくこと、人生の節目節目(会社をクビになるということもあるでしょうし、人との出会いの場合もあるでしょう)でどの方向に進むのか自分の意思で決めることであるといいます。そして節目にたどり着くまでは、流されてしまってもかまわないだろうといいます。そして流されているうちに何か面白いと思えるものに出会えることもあるだろうといいます。成功者と思われている人たちが自分がどのようにキャリアを築いてきたかを調べた人の話が出ているのですが、かなりの割合の人が偶発的な出来事が自分の転機となって現在に至っているそうです。

また、お金の問題に関しては、雇用主が人生は金じゃないと言ったら疑いをもつべきだが、お金はすべてではない。でもお金があればかなえられることも多いので、お金の重要性も素直に認めた方が健全なキャリア形成ができるのではないかと述べてみえます。

「めぞん一刻」という漫画があるのですが、その中でお金に関するやり取りで面白い話があったので蛇足ながら紹介しておきます。一刻館というアパートの管理人の若い女性をめぐる、苦学生の男と金持ちのスポーツマンの話を軸に、アパートの住人たちとのやりとりを描くコメディなのですが、苦学生の男が金持ちの男に「愛は金ではない」ということを言うのに対して金持ちの方が「愛は金では得られないが、愛に潤いを与えることができる」と言っております。お金というのはそんなものなのかなと思います。

なんにしても、よい本だと思いますよ。



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