「ここが違う!勝ち組企業の成果主義」

柳下 公一(やなした こういち)著  日本経済新聞社  1700円+税 2003年6月18日初版発行


武田薬品工業の人事部長として、著者の成果主義の導入を行ったときの経験を踏まえて、成果主義とはどのようなものであるべきかを語られている本です。昨今は、新聞でよく「成果主義」という言葉を見るようになりましたが、かならずしも、うまくいっている例ばかりでもないですし、あからさまに総人件費の抑制のために導入しているとしか思えないようなものも目にしますし、これからも改善に向けて試行錯誤が続いていくのだろうと思います。

著者は、成果主義について語る前に、まずは、これまでの人事制度の変遷について述べています。それによると、現在、よく聞く職能資格制度が登場したのは、1970年代のようです。職能資格制度は、職務遂行能力(課長くらいの仕事ができるとか部長くらいの仕事ができる)を評価するものでしたが、職務遂行能力に応じて、職位をあげるというものであり、かつ職位に伴って給料があがっていくという仕組みであったため、実際に、部下をもっていない課長とか部長というのがごろごろと作り出されてしまうという事態が生じてしまいました。また、この制度は、職務遂行能力を見るとはいえ、なるべく差をつけないようにしようという平等主義の温床となってしまったという問題も生じました。そして、1990年代に至って、職能資格制度への不満が増大していきました。この制度の不満の元となったのが、@資格ごとに求められる要件があいまいであること、A資格と役職・職務との関連や結び付けがあいまいであること、B昇格に能力、実績が反映されていないこと、などが挙げられます。ここから成果主義への模索が始まったとのことです。

この本で挙げられているのは、武田薬品の成果主義への取り組みについてなのですが、報酬(ボーマス)は、成果により、昇格はコンピテンシーによるということらしいです。成果主義の導入にあたっては、評価の中心が「人」から「職務」に移すことになるので、職務ごとに、「期待する成果」というのを定めていき、その過程で必要がないとか、他の部署に移すべきではないかという仕事を整理したりしていったそうです。そして、職務ごとの「期待する成果」が定まったら、その職務の重要度、難易度などから、ジョブサイズ(職務の大きさ)を定めて、それがどれだけ達成されたかを給料に反映させることにしたそうです。そして、成果の評価については、上司との対話を重視することにしたそうです。この対話で重要視されたのは、客観性ではなくて、お互いの納得性であったとのことです。このような対話から成果を評価していくために、管理職は、経営幹部から徹底的に研修を受けさせられたそうです。それでも、まだまだ従業員たちが納得するものには遠く、現在も模索が続けられているということです。

コンピテンシーについては行動特性と現されていますが、これは、どのように成果をあげたかということを測るもののようです。昇給に関しても、コンピテンシーが導入されているようです。この場合も、基本は上司との話し合いの中で、ある成果をあげるのにどのように行動したのかを話していき、お互いにおとしどころを見つけていくということらしいです。

成果主義については、いろいろとパターンがあるようですが、一つの考え方として、この本を読んでおいてもよいように感じました。これから好むと好まざるとに係わらず、関係してしまう人も多いでしょうし。

これから成果主義がどのようになっていくのか、どのように使われていくのかわかりませんが、一つ言えるのは、最大限の努力をしない人間は残れないだろうなということです。働いて稼ぐことに喜びを見出せるような制度ができればと願います



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